2012年1月の弁護士登録をもとに「ジュリナビ」で法律事務所の全国及び都道府県ごとの事務所規模ランキングを作成しました。法律事務所を所属する弁護士数でランキングすることにどのような意味があるのか議論のあることは十分に承知しています。法律事務所の業務の質について、事務所規模=所属する弁護士数との相関関係は弱いでしょう。小規模で高い質の弁護士事務所は存在しており、規模別のランキングはこうした事務所を除外してしまうことになります。一方、弁護士人気ランキングというものも時折目にしますが、何をもって質が高いか、客観的な指標があいまいなものが多く、時には提灯記事的なものを疑わせます。欧米では法律事務所について出版されている業務別ランキングも弁護士に依頼する際の参考にはなっていますが決定的なものではないというのが業界の理解です。
しかし、所属弁護士数が多いことは、その事務所の業務量が多いことであり、依頼人・クライアントからの相応の評価があってのことのでしょう。特に、わが国では、法律事務所についての情報が極めて限られています。公的に得られる所属弁護士の情報だけでも継続的に集計していけば、様々な弁護士業界の動向も見えてくる可能性があると考えます。
今回、全国のランキングについては上位100事務所、都道府県別の弁護士事務所ランキングについては、上位10を目途として初めて集計してみました。但し、地方によっては事務所規模が全体として小さくなっておりランク付けの意義が薄くなっていると考えます。
2012年の新しい動き
リーマンショックとユーロ市場の混乱など世界的に見て弁護士業界は大きな変動に晒されてきています。今回の調査の結果、わが国の金融・証券分野やM&A企業などの取引を専門とする法律事務所も例外ではないようです。特に4大事務所は、これまで順調に規模の拡大を進めてきましたが、初めて頭打ちと規模の縮小を経験しています。わが国への対内投資は減少し、外国企業の国内業務が縮小する一方、企業の積極的な海外でのM&Aの業務はわが国の弁護士事務所はカバーしきれないでいます。4大事務所に頭打ちが見えているもののそれに続く中規模事務所は、概ね現状維持か微増傾向を示して、逆境下でも健闘していると言えます。
欧米系の外資系弁護士事務所の規模の縮小も目立っています。中国の経済規模の著しい拡大とわが国経済の相対的地位の低下により、欧米系法律事務所は、人材の中国シフトを進めてきています。経済規模が世界第3位とはいえ、円高・震災・原発事故など外資系事務所にとり東京に優秀な人材を置くことがますます難しい環境になってきています。弁護士業界もジャパン・パッシングが進んできているようです。
顕著に規模を拡大しているのは、債務整理を中心業務とする法律事務所です。業務内容に合わせ、地方に複数支店を持ち、これまでの法律事務所と異なる運営形態をとることで効率的な業務拡大につなげているようです。もっとも弁護士業界からは異端と見られており、また、業務拡大の頭打ちもあり得るため、今後の行方が注目されます。
<2012年全国法律事務所ランキング100>
※1提携事務所(シモンズ・アンド・シモンズ外国法事務弁護士事務所、モルガン・ルイス・アンド・バッキアス外国法、ウェイクリー外国法事務弁護士事務所事務弁護士事務所、アーキス外国法共同事業法律事務所)含む。
※2提携事務所(ホワイト&ケース外国法事務弁護士事務所)含む。
※3提携事務所(シンプソン・サッチャー・アンド・バートレット外国法事務弁護士事務所)含む。
<2012年都道府県別弁護士事務所ランキング>
北海道・東北地方 関東地方 東海・中部地方 関西地方 中国・四国地方 九州地方 全国
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- 本調査は、2012年2月現在の日本弁護士連合会等の公表データをもとに作成しています。
- 本調査はできるだけ正確性を保つよう合理的な努力をしましたが、所属弁護士数は日々変動し、かつ異動情報がタイムリーに日本弁護士連合会に提供されるとは限らないため、調査結果についてジュリナビとして完全性、正確性を保証するものではありません。
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