2016年5大事務所のパートナートラック

major-law-firms

本年度、5大事務所は、リーマンショック以前を超える数の68期修習の新人アソシエイトを採用しました。アンダーソン・毛利・友常の新人採用数が突出して多かったことがその理由とも言えますが、68期司法修習生の総数が、過去と比べ約1割減であったことを考えると、本年度の5大事務所の採用活動が活発であったと言えるでしょう。新司法試験制度発足後の法曹人口増加を契機に、リーマンショックの影響を受けつつも5大事務所はその規模を拡大してきたと言えるでしょう。一方、5大事務所の新人アソシエイトの大規模採用は、その組織構造に影響を与え、それぞれの組織に「団塊世代」がピラミッド構造として生まれてきました。

ジュリナビでは、我が国を代表する5大事務所が、海外の大手法律事務所において見られる法律業務の変化やそれに伴う組織構造の変化を時間的なズレがあるものの、同様に経験するのではないかという仮説の下に、組織に関する公的なデータを収集分析してきました。我が国の弁護士業界は、世界的な動きから隔絶しているため、海外の大手事務所の動きと比べその変化のスピードは遅々としています。しかし、それでもクライアントのグローバルな動きからの影響は免れることを得ず、海外展開や国内地方展開を進めるなど徐々に変化しつつあります。


(※注 本報告書は、ジュリナビ運営事務局の責任において公表されているデータを合理的な解釈をして作成されたものであります。各事務所の人員構成は、変動しており、公表の時点も方法も各事務所で異なりますので、その内容につき正確性を保証するものではありません。また、ここに記載された意見や見解はジュリナビ運営事務局によるものであり、許可なくデータを引用・転載することを禁じます。)

1.5大事務所のパートナーについて

(1)2016年5大事務所新任パートナー
今年度の5大事務所の新パートナーは以下の通りです。昨年統計の20名と比べ、各事務所とも新任パートナー数が大きく増加し、総計で35名でした。また、昨年は修習期として56期と58期のみでしたが、今年度は、修習期が53期から60期までと広がりがありました。各事務所とも業績拡大傾向が定着してきたのかもしれません。
また、昨年積み残しとなった57期を前後した年代が新パートナーになっていますが、60期の若手パートナーも出現しています。まだ法科大学院修了のアソシエイトはパートナーになっていませんが、2~3年もすれば、いよいよ「団塊世代」の法科大学院修了のアソシエイトからパートナーが生まれることになるでしょう。5大事務所で将来どのくらいの割合でパートナーが生まれるのか興味深いところです。

修習期 西村あさひ アンダーソン
・毛利・友常
森・濱田松本 TMI総合 長島・大野
・常松
合計 割合
53 0 0 0 1 0 1 2.9%
54 1 0 0 0 1 2 5.7%
55 2 0 1 0 0 3 8.6%
56 4 0 1 1 0 6 17.1%
57 1 2 1 4 1 9 25.7%
58 2 2 1 0 1 6 17.1%
59 0 2 2 1 0 5 14.3%
60 0 1 0 2 0 3 8.6%
合計 10 7 6 9 3 35 100%

新任パートナーの修習期別人数▼

新任パートナーにおける出身大学の割合▼

新任パートナーのジェンダー格差
2016年度の新任パートナーの男女比は、TMI総合と長島・大野・常松では2:1で女性のパートナー登用が進んでいますが、西村あさひと森・濱田松本では女性パートナーは2割程度に過ぎず、アンダーソン・毛利・友常では女性パートナーはゼロとなっています。女性パートナー人材が本年度は不足していたとも推測されますが、アンダーソン・毛利・友常と森・濱田の新任女性パートナーの割合は他の3事務所と比べ見劣りします。

新任パートナーのジェンダー別割合▼

(2)5大事務所パートナー数推移
わが国でも大手事務所を中心にパートナーの移動が見られるようになってきました。新任パートナーによるパートナー数増加は必ずしもそのままパートナー数の増加になっておらず、パートナー退任、転籍、他事務所からの途中採用などがその理由と推定されます。昨年の破綻したビンガム・マカッチェンの吸収によるアンダーソン・毛利・友常のパートナー数増加のような顕著な事例は、今年はありませんでしたが5大事務所パートナー総数では漸増しています。

事務所別パートナー総数推移▼(※2013年からTMI総合のデータを追加)

(3)5大事務所パートナーのジェンダー別割合
5大事務所全体のパートナーに占める女性の割合は依然低いままで、女性の活用は進んでいません。5大事務所の中でもアンダーソン・毛利・友常と森・濱田の両事務所は、新任パートナーと同じように他の3事務所と比べ女性割合が低いままです。

パートナーのジェンダー別割合▼

(4)5大事務所パートナーの学歴
5大事務所のパートナーの出身大学は、東大が約3分の2を占め第1位であり、首都圏のいわゆる偏差値上位校出身者によって占められています。東大と並ぶ京大は地域性の影響か少数に留まっています。旧司法試験制度下での東大の優位性がここでも現れています。

パートナーにおける出身大学の割合▼

2.5大事務所のアソシエイトについて

(1)2016年度採用の新人アソシエイトについて~組織拡大を続ける5大事務所~
5大事務所の2016年度採用数はリーマンショック前の採用数を超えました。司法修習終了者数が前年比で約1割減少しているにも関わらず、5大事務所は採用数を増加させたことが注目されます。大事務所を中心にした事務所間で競争原理が働いて来れば、80年代、90年代で世界的に起こった英米系大手事務所での国内での複数事務所開設や海外での事務所開設に進んだ道を同じように5大事務所が辿ると想定されます。そのためには優秀な新しい人材の確保が、今まで以上に重要になってくるでしょう。

(2)過去5年における5大事務所新人弁護士ジェンダー別採用数の推移

(3)急増する予備試験合格者採用
5大事務所の2016年度の新人弁護士で予備試験合格者は、昨年34名から59名へと急増しました。これは新人弁護士採用の4割弱に相当します。TMI総合は、昨年1名予備試験合格者を採用したのみでしたが今年度は8名の予備試験合格者を採用しました。予備試験制度がいよいよエリート選抜方法として5大事務所に定着したと言えます。5大事務所で採用された予備試験合格者のうち法科大学院に在籍したものは22名でした。
5大事務所採用の予備試験合格者の出身大学及び在籍した法科大学院は以下の通りです。

68期予備試験経由と法科大学院終了者の割合▼

5大事務所採用の予備試験合格者の男女比率は以下の通りです。
昨年同様、採用された予備試験合格者に女性はわずか5名にしかすぎません。ただ、昨年の5大事務所採用の予備試験合格者に女性は一人もいなかったので多少の改善かもしれません。

(4)5大事務所新人弁護士採用における学歴、アソシエイトの学歴
予備試験合格者を含めた2016年度5大事務所採用の新人弁護士の出身大学は以下の通りです。東大、慶應と早稲田で約7割を占め、京大、中央と一橋が続いています。法科大学院修了のアソシエイトの出身法科大学院も中央が外れるものの同様な構成になっています。旧司法試験制度のパートナーの学歴と比べ、アソシエイトでは東大の優位性はやや弱まって他の上位ロースクール出身者に分散されています。しかし、予備試験合格者をとると、学歴での東大の優位性が目立ち始めています。
レバレッジ・レイシオの高い事務所では、パートナーは多数のアソシエイトを使い効率的に収益を上げていて、アソシエイトは、多数との競争に打ち勝ちパートナーになるわけですから、パートナーになれる確率は、概ね低くなることになります。一方、レバレッジ・レイシオが低ければ、アソシエイトはパートナーになれる確率が高くなりますが、事務所全体の収益率は一般的に低くなるとも言われています。もちろん業務内容によってレバレッジ・レイシオが高くアソシエイトが多くないと業務効率的が上がらない業務もありますので一概にレバレッジ・レイシオが高いほうがいいというわけでもありません。

68期新人弁護士出身大学別人数▼

68期新人弁護士出身法科大学院別人数▼

アソシエイト全体の出身大学別人数▼

アソシエイト全体の出身法科大学院別人数▼

アソシエイト全体における法科大学院出身者の人数▼

(5)5大事務所新人弁護士採用におけるジェンダー問題、アソシエイトのジェンダー問題
5大事務所においてパートナーとは異なり、全体としてはアソシエイトの女性の活用は進んでいると言えます。

68期新人弁護士のジェンダー別割合▼

アソシエイト全体のジェンダー別割合▼

【参考】60~68期弁護士全体における男女の割合(2015年弁護士白書P45より)

修習期 男性  女性  合計  女性割合
60~68期 12,701 3,922 16,623 23.6%
3.各5大事務所パートナー・アソシエイトの期別人員構成図

新司法試験制度発足後から5大事務所はそれぞれ新人弁護士の採用を活発化させてきましたが、直後のリーマンショックによる業務停滞を受け64期を境に採用を一気に絞り込みました。しかし、ここ2年景気の回復により再度新規採用を活発化しています。各事務所ともリーマンショックにより一時期縮小したピラミッド構造は復活しています。

 

4.5大事務所最新レバレッジ・レイシオ

5大事務所のパートナー数対アソシエイト数の比率、レバレッジ・レイシオの最近5年間の経年変化は以下のとおりです。各事務所ともレバレッジ・レイシオは低下傾向にあります。一時期レバレッジ・レイシオが4近くあった西村あさひも低下し、アンダーソン・毛利・友常、森・濱田、長嶋・大野・常松も2程度になっています。世界的に大手法律事務所のレバレッジ・レイシオは低下傾向にあり、パートナーの働き方の変化や法律事務所の収益性の変化など同様な変化が、長期的に見ればわが国の5大事務所にも起こっているのかもしれません。

2016年5大事務所レバレッジ・レイシオ▼

5大事務所レバレッジ・レイシオ推移▼(※2013年からTMI総合のデータを追加)

出典・免責事項・引用・転載等について

  1. 本調査は、2016年4月時点の日本弁護士連合会等の公表データをもとに作成しています。
  2. 本調査はできるだけ正確性を保つよう合理的な努力をしましたが、所属弁護士数は日々変動し、かつ異動情報がタイムリーに日本弁護士連合会に提供されるとは限らないため、調査結果についてジュリナビとして完全性、正確性を保証するものではありません。
  3. 本調査に記載されたコメントはジュリナビ自身の見解であり、法科大学院協会や各法科大学院の見解とは一切関係はありません。
  4. 本調査に記載された調査、編集、分析された内容についてその一部又は全部につきジュリナビに無断で転載、掲載することを禁止させていただきます。
タイトルとURLをコピーしました