新61期生司法修習生進路調査速報

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ジュリナビでは、2008年12月18日現在の日本弁護士連合会等の公表データ及び独自の調査で得た情報により新61期生の就職動向の調査を行い、各種情報を編集、統合して分析を加えました。ジュリナビ利用登録者及び法科大学院その他関係者に法科大学院修了生の就職状況の現状を知っていただき、修了生自身の今後の就職活動とキャリアプランニング、並びに法科大学院関係者による支援に役立ててもらうことを目的として、その結果およびジュリナビの見解を公表することとしました。これまで類似の情報は関係者により公表されてきましたが、法科大学院修了生および在学生を念頭においたものでなく、また、一覧性のある形で、且つ、タイムリーに提供されることはありませんでした。十分な量の客観的な情報は、修了生や在学生の就職活動やキャリアプランニングに極めて大切なことです。

I  新61期生就職状況

米国のサブプライムローン問題に端を発する世界的な景気減速が急速に進んでいます。弁護士業務は比較的景気の動向に左右されないとはいえ、今回のような急速かつ広範な景気の落ち込みは、今年度の法律事務所の新人弁護士の採用にも大きな影響が出るのではないかと考えられます。新61期生は就職活動を昨年度秋までには終えており幸いなことにその影響を大きく受けずに済みました。以下が、新61期生の就職状況の一覧です。

新61期生就職状況

2007年新司法試験合格者 1,851
新61期司法修習生 1,812
(1) 二回試験受験者 1,844
(2) 二回試験合格者(法曹資格者) 1,731
(3) 検事採用者 73
(4) 判事補採用者 75
(5) 弁護士登録者 1,499
(6) 所属不明者((2)-((3)+(4)+(5))) 84
(5) 新規弁護士登録者 1,499
(4) (うち新61期生) 1,479

(注)

  1. (1)「二回試験受験者」には再受験者33名を含む。
  2. (5)「弁護士登録者」は2008年12月18日付で新規登録された新61期生を集計。
  3. (6)「所属不明者」は調査日現在の状況であり、調査日以降新規登録される可能性がある。
Ⅱ 新61期生採用数別内訳

我が国で法律事務所の組織化、規模の拡大が進んでいるとはいえ、数でいえば大多数の事務所が個人事務所であり、いわゆる大、中規模の事務所の新人弁護士採用数の割合は極めて低いものです。新61期生の採用に踏み切った法律事務所は全部で1,038事務所であり、我が国の法律事務所総数の10%を切っている状態です。このことは我が国の法律事務所の多くは個人事務所など小規模事務所であり、定期的な採用余力が極めて限られていることを示しているものでしょう。
また、新61期生を採用した事務所のうち、1名のみ採用した事務所は全体の8割を占めています。こうした事務所は必ずしも毎年定期的に新人採用をするとは限りませんので、単数のみ採用の事務所や採用のなかった事務所への就職活動は、実際上人的な関係や地方弁護士会からの情報によることになるのでしょう。
今年は景気低迷を受け大手事務所でも採用数を減らすようであり、新61期生を採用した法律事務所や企業が新63期生の採用を同様にするという保証はありません。しかし、2名以上採用しているところであれば今年度の新人弁護士採用の可能性は十分あるとも考えられます。

新61期生採用数内訳

採用数 事務所数 採用数合計
事務所数 構成比 採用総数 構成比
10名以上 6 0.6% 134 9.0%
5~9名 14 1.3% 91 6.1%
3~4名 55 5.3% 177 11.9%
2名 117 11.3% 234 15.8%
1名 846 81.5% 846 57.1%
全体 1,038 100.0% 1,482 100.0%

(注)

  1. 2008年12月18日付の所属弁護士数及び新規登録された新61期生を集計。
  2. 「採用数1名」には、所属なしの新規登録弁護士9名が含まれている。
Ⅲ 法律事務所別採用数ランキング

法律事務所の新人弁護士の採用数のランキング(上位21位まで)を一覧性のあるものにしてみたのが以下の表です。一般的にいえば定期的に数多くの新人弁護士を採用する法律事務所はその経営が安定していると言えるでしょう。業容の拡大の見通しがなければ法律事務所として当初戦力にならない新人弁護士の採用に踏み切ることはありません。特に我が国の法律事務所は比較的採用後の転職率が高くないので、採用にあたり保守的な事務所が多いようです。但し、新人弁護士の離職率、ターンオーバーが高く比較的多数の新人弁護士を採用する場合もあるので注意することは必要かもしれません。また、年度に応じ採用人数が大きくぶれる法律事務所は、合併などの特殊要因がなければ業務内容の変化に影響を受けやすい体質で、期別の人員構成のゆがみがでてくるので注意が必要かもしれません。今回の調査はジュリナビとして初めての試みですが今後継続的に採用動向につき調査を継続していく予定ですので、判断材料足り得る情報も提供できるようになると思います。
必ずしも所属弁護士数が多い事務所が大量に採用しているわけではなく、大手は一定水準の人数を継続的に採用している一方で、外資系法律事務所や中小の弁護士法人などが積極的に採用した結果が表れています。

法律事務所別採用数ランキング

採用数
順位
事務所名 都道府県 新61期生
採用数
所属
弁護士数
1 長島・大野・常松法律事務所 東京 29 325
2 森・濱田松本法律事務所 東京 28 280
3 西村あさひ法律事務所 東京 27 435
4 TMI総合法律事務所 東京 23 211
5 アンダーソン・毛利・友常法律事務所 東京 16 266
6 シティユーワ法律事務所 東京 11 104
7 東京青山・青木・狛法律事務所 ベーカー・アンド・マッケンジー外国法事務弁護士事務所 外国法共同事業 東京 9 113
7 北浜法律事務所・外国法共同事業 大阪・東京・福岡 9 65
9 渥美総合法律事務所・外国法共同事業 東京 8 71
9 弁護士法人曾我・瓜生・糸賀法律事務所 東京 8 31
11 弁護士法人大江橋法律事務所 大阪・東京 7 90
11 外国法共同事業・ジョーンズ・デイ法律事務所 東京 7 50
13 松田綜合法律事務所 東京 6 16
13 弁護士法人ITJ法律事務所 東京 6 15
13 大塚製薬株式会社 東京・大阪 6 6
14 ビンガム・マカッチェン・ムラセ外国法事務弁護士事務所 坂井・三村・相澤法律事務所 外国法共同事業 東京 5 64
14 岩田合同法律事務所 東京 5 50
14 虎ノ門総合法律経済事務所 東京 5 20
14 ひかり総合法律事務所 東京 5 19
14 法律事務所ホームロイヤーズ 東京 5 9
21 牛島総合法律事務所 東京 4 50
21 モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所 伊藤 見富法律事務所 外国法共同事業事務所 東京 4 44
21 クリフォードチャンス法律事務所外国法共同事業 東京 4 37
21 弁護士法人三宅法律事務所 大阪・東京 4 37
21 田辺総合法律事務所 東京 4 36
21 フレッシュフィールズブルックハウスデリンガー法律事務所 東京 4 27
21 弁護士法人北千住パブリック法律事務所 東京 4 19
21 大阪船場法律事務所 大阪 4 15
21 森法律事務所 東京 4 12
21 弁護士法人岡林法律事務所 東京・千葉 4 11
21 弁護士法人Bridge Rootsブリッジルーツ 福岡・東京・愛知 4 10
21 弁護士法人昴法律事務所 大阪 4 5
合計 273 2,543

(注)

  1. 「弁護士数」は2008年12月18日付の所属弁護士数。
  2. 「新61期生」は2008年12月18日付で新規登録された弁護士のうち新61期生であることが判明した弁護士数。
  3. 弁護士法人は従事務所(支店)も含む人数で集計。
Ⅳ 企業・その他法人別採用数ランキング(2名以上採用のみ)

企業採用では大塚製薬が6名の新61期生を採用したことが注目されます。持ち株会社を含めると7名にも上ります。新しく法務部門を組織改革したためでしょうか、今後も継続して同規模の採用が続いていくのでしょうか。同社に続いては三菱東京UFJ銀行及びヤフーが3名採用しました。一方で組織内弁護士数の多い外資系企業は、殆んど経験者採用のため新61期の採用数は少数に留まりました。企業として中規模事務所に匹敵する採用数は企業採用が進まない中新しい動きではないでしょうか。今後こうした採用が続いていくのか、どのような法務部門に成長するか興味深いところです。

企業・その他法人別採用数ランキング(2名以上採用のみ)

採用数
順位
法人名 都道府県 人数
1 大塚製薬株式会社 東京・大阪 6
2 ヤフー株式会社 東京 3
2 株式会社三菱東京UFJ銀行 東京 3
4 フロンティア・マネジメント株式会社 東京 2
4 旭硝子株式会社 東京 2
4 株式会社ドン・キホーテ 東京 2
4 三菱商事株式会社 東京 2
4 第一生命保険相互会社 東京 2
合計 22

(注)
「新61期生」は2008年12月18日付で新規登録された弁護士のうち新61期生であることが判明した弁護士数。

Ⅴ 所属弁護士数上位50事務所の採用数

大手事務所を含め我が国の法律事務所の新人弁護士採用は保守的のようです。我が国で弁護士数が上位50位以内の事務所でも採用が0または1名にとどまる事務所も見られます。

採用数は別として、ランキングを通じいくつかのことが判明してきます。
1. これまで我が国の法律事務所の事務所規模は小さく弁護士数が20名以上の事務所数は限られていましたが、事務所の合併など統合が進み弁護士数20名以上の事務所は50をこえるまでになりました。国際的に見て速度は遅いですが今後も企業取引を中心とする事務所は組織化、規模の拡大が進むものと思われます。

2. 上位50位以内の事務所の殆んどが東京に集中しているのが目を引きます。また大阪に拠点をもっている上位50位にランクされている事務所はすべて東京での拠点を持っていることが注目されます。こうした規模の大きな事務所の対象業務は企業法務・渉外が中心であり、企業の東京集中に応じて、我が国の法律サービスが東京に集中していることが明らかになります。

3. また我が国で最大規模の事務所である西村あさひ法律事務所の採用数が昨年の72名から46名(旧61期19名と新61期27名の合計)に大幅に減っているのが目を引きます。
※ただし同事務所は2007年7月に西村ときわ法律事務所とあさひ法律事務所国際部門が合併しており、60期の採用数は合併前における各事務所の内定者の合計と推定されるため、単純比較はあまり意味がないかもしれません。

4. TMI総合法律事務所が採用数を伸ばし、6位との差が開いてきており5大事務所というくくりがされるようになるかもしれません。もっとも4大や5大などでくくる意味があるとはジュリナビは考えていません。

なお、法律事務所及びその所属弁護士の質の優劣をつける目的で提供したものでなく、ジュリナビとして規模が質を表すという立場は一切とっていません。

所属弁護士数上位50事務所の採用数

所属弁護士数順位 事務所名 都道府県 所属弁護士数 新61期生採用数
1 西村あさひ法律事務所 東京 435 27
2 長島・大野・常松法律事務所 東京 325 29
3 森・濱田松本法律事務所 東京 280 28
4 アンダーソン・毛利・友常法律事務所 東京 266 16
5 TMI総合法律事務所 東京 211 23
6 東京青山・青木・狛法律事務所 ベーカー・アンド・マッケンジー外国法事務弁護士事務所 外国法共同事業 東京 113 9
7 シティユーワ法律事務所 東京 104 11
8 弁護士法人大江橋法律事務所 大阪・東京 90 7
9 渥美総合法律事務所・外国法共同事業 東京 71 8
10 北浜法律事務所・外国法共同事業 大阪・東京・福岡 65 9
11 ビンガム・マカッチェン・ムラセ外国法事務弁護士事務所 坂井・三村・相澤法律事務所 外国法共同事業 東京 64 5
12 外国法共同事業・ジョーンズ・デイ法律事務所 東京 50 7
12 岩田合同法律事務所 東京 50 5
12 牛島総合法律事務所 東京 50 4
15 弁護士法人淀屋橋・山上合同 大阪・東京 49 2
16 弁護士法人御堂筋法律事務所 大阪・東京 48 3
17 モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所 伊藤 見富法律事務所 外国法共同事業事務所 東京 44 4
18 外国法共同事業法律事務所リンクレーターズ 東京 42 2
19 ホワイト&ケース法律事務所 東京 40 2
20 隼あすか法律事務所 東京 39 3
21 光和総合法律事務所 東京 38 2
21 柳田野村法律事務所 東京 38 3
23 クリフォードチャンス法律事務所外国法共同事業 東京 37 4
23 弁護士法人三宅法律事務所 大阪・東京 37 4
25 田辺総合法律事務所 東京 36 4
26 阿部・井窪・片山法律事務所 東京 33 0
26 東京丸の内・春木法律事務所 東京 33 1
26 弁護士法人中央総合法律事務所 大阪・東京 33 1
29 ポールヘイスティングス法律事務所・外国法共同事業 東京 32 3
30 さくら共同法律事務所 東京 31 3
30 弁護士法人関西法律特許事務所 大阪・東京 31 1
30 弁護士法人曾我・瓜生・糸賀法律事務所 東京 31 8
33 東京法律事務所 東京 28 0
34 フレッシュフィールズブルックハウスデリンガー法律事務所 東京 27 4
34 奥野総合法律事務所 東京 27 1
34 三宅坂総合法律事務所 東京 27 0
34 鳥飼総合法律事務所 東京 27 3
34 桃尾・松尾・難波法律事務所 東京 27 2
34 弁護士法人第一法律事務所 大阪・東京 27 2
40 虎門中央法律事務所 東京 26 1
40 名古屋第一法律事務所 愛知 26 0
42 あさひ法律事務所 東京 25 1
42 ブレークモア法律事務所 東京 25 3
42 外国法共同事業オメルベニー・アンド・マイヤーズ法律事務所 東京 25 3
42 真和総合法律事務所 東京 25 1
42 東京合同法律事務所 東京 25 2
47 鴻和法律事務所 福岡 24 3
48 ユアサハラ法律特許事務所 東京 23 1
48 虎ノ門南法律事務所 東京 23 1
48 片岡総合法律事務所 東京 23 1
合計 3,306 267

(注)

  1.  「弁護士数」は2008年12月18日付の所属弁護士数。
  2.  「新61期生」は2008年12月18日付で新規登録された弁護士のうち新61期生であることが判明した弁護士数。
  3.  弁護士法人は従事務所(支店)も含む人数で集計。
出典・免責事項・引用・転載等について
  1. 本調査は、2008年12月18日現在の日本弁護士連合会等の公表データやヒアリングをもとに作成しています。
  2. 本調査はできるだけ正確性を保つよう合理的な努力をしましたが、所属弁護士数は日々変動し、かつ異動情報がタイムリーに日本弁護士連合会に提供されるとは限らないため、調査結果についてジュリナビとして完全性、正確性を保証するものではありません。
  3. 本調査に記載されたコメントはジュリナビ自身の見解であり、法科大学院協会や各法科大学院の見解とは一切関係はありません。
  4. 本調査に記載された調査、編集、分析された内容についてその一部又は全部につきジュリナビに無断で転載、掲載することを禁止させていただきます。
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