新62期生司法修習生進路調査速報

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「ジュリナビ」運営事務局では、最高裁から公表されたデータ及び弁護士登録に基づき2010年2月末現在の新62期生の就職状況を調査した。今後得られたデータをより詳細に報告する予定であるが、できるだけ客観的情報を社会に伝える必要から、取りあえず判明しているデータ分析を公表することとした。
2008年度司法試験の合格者数は、2,065名であったが、新62期生として司法修習を終え、法曹資格を得た者は1,992名であった。判検事採用数は、昨年比若干増加したのみだが、弁護士登録者数は昨年と比べ約250名増と大きく増加した。法科大学院制度の下、法曹人口が増加しており、これ以上の新規法曹資格者の採用は無理であると地方弁護士会を中心に声が上がっていた。 しかし、現実を見ると、新62期生の弁護士未登録者数は、2月末現在68名であり、即独者が18名であり、新62期生は、昨年新61期生と比べても就職率は悪くなっておらず、ほぼ完全就職を達成したといってよい。新62期生の修習期間中、景気の悪化による事務所の採用減が心配されたがこれも杞憂であった。新62期生の殆どが、弁護士事務所に就職しており、採用後の人材の移動を考慮すれば、わが国の法曹人口が、新人採用余力の点から限界点に達したと言えないのではないだろうか。

従来と比べ司法修習期間が短いため、就職活動期間が短くなり司法修習終了時までに就職先が決まらず、司法修習中の内定率が低くなり、雇用不安が煽られがちである。しかし、就職活動期間を延ばせば適職が見つかる状況と考えられる。日弁連が1月に把握した司法修習修了時に就職が決まっていない新62期生の弁護士未登録者も今回の調査では減少しており、時間の経過とともに就職先が決まってきていることがわかる。また、「即独」とみられた者も多くが事務所や企業就職に転換している。「即独」で食べていくのは、新人法曹にとり現実的に容易ではなく、むしろ就職先が当面決まっていないために取りあえず「即独」の形でいる面もある。2月末時点の「即独」18名もいずれ何らかの就職先を見つけることになる可能性もある。「即独」問題は、一部弁護士に過剰に取り上げられているのではなかろうか。

I  新62期生就職状況

新62期生就職状況

2008年新司法試験合格者 2,065
新62期司法修習生(修習生採用者数) 2,044
新62期司法修習者(修習生採用者数) 2,044
二回試験受験者 2,067
二回試験不合格者 75
二回試験合格者 1,992
新規法曹有資格者 1,992
検事採用者 67
判事補採用者 99
弁護士登録者 1,758
弁護士未登録者 68
弁護士登録者 1,758
事務所所属 1,698
企業内弁護士 42
即独推定者 18

(注)

  1. 「二回試験受験者」には再受験者23名を含む。
Ⅱ 新62期生事務所別採用数ランキング

昨年、新62期生の大手事務所の採用数が景気の動向を受け大きく減るのではないかと言われていたが、リーマンショックが大手事務所の内定後であったせいもあり、前年比では、TMI綜合法律事務所やシティユーワ法律事務所など準大手が大幅に採用数を減らしたものの、4大事務所は、トータルで昨年以上の採用数になった。特に、西村あさひ法律事務所は46名の新62期生の採用(但し、旧62期生の採用数は8名であり、新旧61期生の採用数より若干増加したことになる)となっている。一方、目につくのは、外資系事務所の採用数の大幅な減少といわゆるクレサラ系事務所の採用数の増加である。前者は、リーマンショック以来の本国での業務縮小による弁護士レイオフや採用見直しが、わが国にも及んだためである。外資系事務所でも比較的わが国に根をおろし、国内事務所が独立して業務を支えている事務所の採用減は比較的少なかったが、金融中心の外資系事務所は大きく採用数を減らしている。ただ、その中で、英国のマジックサークルのアラン・アンド・オーヴェリー事務所は4名の採用に踏み切っている。クレサラ系事務所の採用数増大は顕著であり、中途採用でも積極的な採用をかけているところも多く、過払い業務がピークに達していることがこれからもわかる。
これに伴い、新62期生の採用数ランキングに新しい弁護士事務所名が散見されるようになってきているのも新しい傾向である。弁護士法人ベル法律事務所、港国際法律事務所、アール総合法律事務所、虎ノ門法律経済事務所、日比谷ステーション法律事務所は、新61期生の採用実績がなかったが数名の採用数になっている。弁護士法人朝日中央綜合法律事務所、弁護士法人ITJ八王子、弁護士法人アヴァンセリーガルグループも新61期生採用実績は1名のみであった。また、複数の事務所を持つ弁護士法人の採用数ランクインが目につくようになってきた。特に、弁護士法人鹿児島中央法律事務所のランクインは、地方事務所としては異例である。弁護士事務所の運営形態が個人事務所から法人化することが、業務増大に結びつき、新人雇用につながるのか、今後の推移を見て行きたい。

新62期生事務所別採用数ランキング

採用数
順位
事務所名 都道府県 新62期生
採用数
所属
弁護士数
新61期生
採用数
1 西村あさひ法律事務所 東京都 46 472 27
2 長島・大野・常松法律事務所 東京都 30 339 29
3 アンダーソン・毛利・友常法律事務所 東京都 28 290 16
4 森・濱田松本法律事務所 東京都 26 301 28
5 TMI総合法律事務所 東京都 15 226 23
6 弁護士法人法律事務所ActiveInnovation 宮城県・広島県・大阪府・東京都・北海道 9 24 4
7 弁護士法人曾我・瓜生・糸賀法律事務所 東京都 8 45 8
7 弁護士法人アディーレ法律事務所 東京都 8 35 3
9 弁護士法人朝日中央綜合法律事務所 大阪府・東京都 7 15 1
9 東京青山・青木・狛法律事務所ベーカー・アンド・マッケンジー外国法事務弁護士事務所外国法共同事業 東京都 7 119 9
9 弁護士法人北浜法律事務所 大阪府・東京都・福岡県 7 69 9
12 渥美総合法律事務所・外国法共同事業 東京都 6 74 8
12 弁護士法人大江橋法律事務所 大阪府・東京都 6 94 7
14 弁護士法人ITJ八王子 埼玉県・東京都 5 12 1
14 弁護士法人ベル法律事務所 東京都 5 13 0
14 港国際法律事務所 神奈川県 5 11 0
14 山下江法律事務所 広島県 5 15 2
14 弁護士法人鹿児島中央法律事務所 鹿児島県 5 11 2
14 弁護士法人小野総合法律事務所 東京都 5 25 3
14 モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所伊藤見富法律事務所外国法共同事業事務所 東京都 5 49 4
21 弁護士法人御堂筋法律事務所 大阪府・東京都 4 50 3
21 法律事務所フロンティア・ロー 東京都 4 6 0
21 アレン・アンド・オーヴェリー外国法共同事業法律事務所 東京都 4 23 3
21 ビンガム・マカッチェン・ムラセ外国法事務弁護士事務所坂井・三村・相澤法律事務所外国法共同事業 東京都 4 67 5
21 クリフォードチャンス法律事務所外国法共同事業 東京都 4 40 4
21 アール総合法律事務所 愛知県 4 5 0
21 シティユーワ法律事務所 東京都 4 110 11
21 弁護士法人ITJ法律事務所 東京都 4 17 6
21 弁護士法人アヴァンセリーガルグループ 東京都 4 11 1
21 一番町綜合法律事務所 東京都 4 13 3
21 ひかり総合法律事務所 東京都 4 22 5
21 虎ノ門法律経済事務所 東京都 4 31 0
21 日比谷ステーション法律事務所 東京都 4 8 0
21 法律事務所MIRAIO 東京都 4 14 5
21 法律事務所オーセンス 東京都 4 18 3
合計 298 2,674

(注)

  1. 弁護士法人は従事務所(支店)も含む人数で集計。
Ⅲ 採用人数別の分布割合

相変わらず、わが国の弁護士事務所の新法曹採用の大半は、1名採用(約全体の求人案件の約55%)である。2名採用を加えれば75%になり、修習生は、拡散した就職機会をとらえなければならない。

採用数 事務所数 採用数合計
事務所数 構成比 採用総数 構成比
10名以上 5 0.4% 145 8.5%
5~9名 15 1.3% 93 5.5%
3~4名 52 4.4% 171 10.1%
2名 170 14.3% 340 20.0%
1名 949 79.7% 949 55.9%
全体 1,191 100.0% 1,698 100.0%
Ⅳ 弁護士会別新62期生登録数

単位会別の新62期生の登録状況をみると首都圏、大阪、名古屋など大都市の弁護士会に登録が集中していることが分かる。法曹の就職機会も社会構造を表し東京一点集中が進んできている。

弁護士会別新62期生登録数

弁護士会 新62期生採用数
東京 333
第二東京 277
第一東京 201
大阪 200
愛知県 97
横浜 78
福岡県 55
埼玉 45
広島 38
千葉県 37
兵庫県 32
札幌 28
京都 27
岡山 20
静岡県 19
仙台 19
新潟県 18
鹿児島県 17
群馬 16
熊本県 12
栃木県 11
茨城県 10
三重 10
福島県 10
和歌山 10
沖縄 9
長崎県 9
長野県 9
徳島 9
滋賀 8
青森県 8
富山県 8
愛媛 6
鳥取県 6
島根県 6
岩手 5
金沢 5
佐賀県 5
山口県 5
大分県 5
奈良 5
高知 4
山梨県 4
旭川 3
宮崎県 3
山形県 3
函館 3
福井 3
岐阜県 2
釧路 2
香川県 2
秋田 1
Ⅴ 法曹三者以外の就職先

新62期生の企業採用数は、2月末現在42名である。法曹資格者総数が増加したにも拘わらず、新61期生の企業採用数とあまり変わっていない。昨年は、企業業績の急速な悪化により一般的に企業の新人採用は極端に抑えられたため法曹資格者の採用も抑えられたと考えられる。現実にマーケットを見ても企業法務の求人数は一昨年比7割程度に落ち込んだと思われる。採用企業の顔ぶれをみると、新62期生を採用した企業の大半は前年度の採用実績のない企業(しかも、殆どが、これまで法曹資格者の採用実績がない企業)であり、昨年に引き続き法曹資格者の採用を行った企業は極めて少ない。企業法務自体にそれほど大きな新規求人余力はないため、今後の企業の法曹資格者採用は、これまで法曹資格者の採用実績がない企業の新規採用が中心になり、主要企業において法曹資格者採用需要(といっても多くは一企業一名である)が一巡するまでこうした傾向が続くのではないかと考えられる。
しかし、もし司法試験の合格者数が2,000名程度で今後推移するのであれば、新62期生の採用状況をみると弁護士事務所採用だけで殆どの新人法曹の需要は満たされることになり、企業法務など新しい職域と考えられた分野に新人法曹が回って行かないことが危惧される。司法試験合格者数が2,000名程度では、企業などが新人法曹を採用しようとしても、採用レベルを維持できるような十分に大きな新人法曹の母集団を形成させることは困難である。もし、法曹関係者が、真剣に新しい職域を開拓しようとするなら司法試験合格者数を大幅に増やし魅力的な人材を選択できるようにすることが重要であろう。

企業・その他法人別新62期生採用数

採用数
順位
法人名 都道府県 新62期生採用数 新61期生採用数
1 三菱商事株式会社・三菱商事株式会社法務部 東京 3 2
2 大阪ガス株式会社総務部法務室 大阪 2 0
2 住友生命保険相互会社 東京 2 0
2 ソフトバンクBB株式会社 東京 2 1
5 和光純薬工業株式会社 大阪 1 0
5 明治安田生命保険相互会社法務室 東京 1 0
5 東芝ホームアプライアンス株式会社総務部 東京 1 0
5 東京海上日動火災保険株式会社法務部 東京 1 0
5 東海旅客鉄道株式会社法務部 愛知 1 0
5 東レ株式会社 東京 1 0
5 長瀬産業株式会社 東京 1 0
5 中央三井トラスト・ホールディングス株式会社コンプライアンス統括部 東京 1 0
5 新日本アーンストアンドヤング税理士法人 東京 1 1
5 住友ゴム工業株式会社 兵庫 1 0
5 鹿児島銀行 鹿児島 1 0
5 三洋信販債権回収株式会社 東京 1 0
5 三菱重工業株式会社法務部 東京 1 0
5 三井住友海上火災保険株式会社 東京 1 0
5 高野総合会計事務所 東京 1 0
5 古河電気工業株式会社法務部 東京 1 0
5 株式会社富士通ゼネラル法務部 神奈川 1 0
5 株式会社東芝法務部 東京 1 1
5 株式会社西日本シティ銀行 福岡 1 0
5 株式会社山陰合同銀行 島根 1 0
5 株式会社三菱東京UFJ銀行法務室 東京 1 3
5 株式会社構造計画研究所 東京 1 0
5 株式会社リニカル 大阪 1 0
5 株式会社セディナ法務部 東京 1 0
5 旭硝子株式会社 東京 1 2
5 ヤフー株式会社 東京 1 3
5 ブロードメディア株式会社 東京 1 0
5 パル債権回収株式会社 東京 1 0
5 パナソニック電工株式会社 大阪 1 0
5 ソフトバンクモバイル株式会社 東京 1 0
5 キヤノン株式会社 東京 1 0
5 KDDI株式会社法務部 東京 1 0
5 JSR株式会社 東京 1 0
合計 42

(注)

  1. 「都道府県」は所属弁護士会の都道府県を記載。
出典・免責事項・引用・転載等について
  1. 本調査は、最高裁判所広報課へのヒアリングや2010年2月末日現在の日本弁護士連合会等の公表データをもとに作成しています。また、新61期生の採用数については、「ジュリナビ新61期生司法修習生進路調査」(2008年12月18日現在のデータ)より引用しています。
  2. 本調査はできるだけ正確性を保つよう合理的な努力をしましたが、所属弁護士数は日々変動し、かつ異動情報がタイムリーに日本弁護士連合会に提供されるとは限らないため、調査結果についてジュリナビとして完全性、正確性を保証するものではありません。
  3. 本調査に記載されたコメントはジュリナビ自身の見解であり、法科大学院協会や各法科大学院の見解とは一切関係はありません。
  4. 本調査に記載された調査、編集、分析された内容についてその一部又は全部につきジュリナビに無断で転載、掲載することを禁止させていただきます。
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