修習生の就職難が世間で喧伝されているが、昨年司法修習を終えた新62期生の就職状況については、ジュリナビで昨2月に調査結果を公表した。職を得られないもの、即独を余儀なくされているものが相当数いるものと思われたが、即独と推定されたものは、18名(下記の表参照)であり、弁護士未登録者も68名と実質上完全就職であると言えた。
今回、その時点で68名の弁護士未登録者が、その後、どのようになったのか追跡調査を行ってみた。5月と8月の2回の時点をとり、弁護士登録を基に、また、日弁連の公表資料を参考に調査をした結果は、下記の表の通りである。弁護士未登録でも、法曹三者以外の職に就いているものが14名あり、りっぱに職に就いていると言える。それでは、就職難の犠牲者は何人か見てみると、職に就いていないもの、又は、職に就いていることが不明なもの(理由は不詳である)は5月で27名、8月で18名であり、全体の1%に過ぎない。
一方、日弁連が大騒ぎしているいわゆる「大量即独者」は、推定では15名、全体の1%以下になる(但し、一旦、就職し、その後独立したものはここでは調査の対象としておらず、文字通り即独したもののみを計上している)。
確かに、就職活動の過程では、弁護士事務所の適切な採用情報の入手が困難で、修了生が右往左往し、就職難の状況を呈していたかもしれないが、時の経過により徐々に就職ができるようになったのである。法科大学院生は、将来の職につき十分余裕をもって考え、就職先を選ばなければならないが、一部の関係者から意図的に流されている就職難の噂に過剰に反応する必要はない。むしろ就職難に対する過剰な反応で適職を冷静に選択する機会を失い、後で、再就職を余儀なくされる事例も散見される。
一方、法曹資格があるからと言って、職や収入が保証されるという昔ながらの法曹像からの頭の切り替えは必要である。法科大学院制度ができルールが変わったのである。毎年2000人を超える法曹資格者が生まれる世の中であり、法曹各自が切磋琢磨して競争することが期待されている。現実に就職活動においても、その競争は避けられず、求人側は、できる限り良い人材を採りたいので必然的にそういった人材から就職が決まる。法曹資格があるからと言って同等の待遇を期待することは、世間は認めてくれないのである。就職活動の過程で自身の社会的評価を受けるわけで、必ずしもすべての修習生にとり愉快な経験とは言えないであろう。しかし、評価は評価として冷静に受け止めれば良い。もちろん、就職時の第三者からの能力評価が一生続くわけもなく、その後の能力次第でいくらでも挽回のチャンスはあるのであり、就職時の評価が厳しいものであっても自己評価を下げる必要は全くない。実務になれば、学歴や成績(もちろん基礎能力を身につけていることが前提だが)に関係なく自由な競争ができるのである。
新62期生就職状況
2010年 2月現在 |
2010年 5月10日 現在 |
2010年 8月25日 現在 |
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弁護士 登録者 |
事務所所属 | 1,698 | 1,723 | 1,732 |
組織内弁護士 | 42 | 47 | 47 | |
即独推定者 | 18 | 15 | 15 | |
計 | 1,758 | 1,785 | 1,794 | |
弁護士 未登録者 |
法曹三者以外の就職決定者 (企業、官公庁、大学等への就職等) |
68 | 14 | 14 |
就職未決定者及び不明者 | 27 | 18 |
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- 本調査は、官報、最高裁判所広報課へのヒアリングや2010年2月末日・5月10日・8月25日現在の日本弁護士連合会等の公表データをもとに作成しています。
- 本調査はできるだけ正確性を保つよう合理的な努力をしましたが、所属弁護士数は日々変動し、かつ異動情報がタイムリーに日本弁護士連合会に提供されるとは限らないため、調査結果についてジュリナビとして完全性、正確性を保証するものではありません。
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