本年1月より新64期生の就職動向を調査し、掲載してきたが、以下が、弁護士未登録者の最終的な数字と考えられる。
新64期生就職状況
所属 | 2012年 1月時点 |
2012年 4月時点 |
2012年 6月時点 |
1月時点 との比較 |
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弁護士登録者 | 1,604 | 1,695 | 1,705 | +101 | |
事務所所属(即独除く) | 1,489 | 1,549 | 1,568 | +79 | |
組織内弁護士 | 61 | 82 | 83 | +22 | |
即独推定者 | 事務所名あり | 32 | 40 | 29 | -3 |
事務所名なし | 22 | 25 | 25 | +3 | |
計 | 54 | 65 | 54 | ±0 | |
未登録者 | 220 | 129 | 119 | -101 |
新64期生未登録者男女比
2012年 1月時点 |
2012年 4月時点 |
2012年 6月時点 |
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男性 | 138 | 67 | 62 |
女性 | 82 | 62 | 57 |
合計 | 220 | 129 | 119 |
結局、新64期生の最終的な弁護士未登録者数は、119名となった。新司法試験制度の下、初めて3桁の数字となった。過去の例では、司法修習後半年で大幅に弁護士未登録者数が減っているが、今回はそうはならなかった。これをもって弁護士過剰と言えるのか119名につき情報がなく即断はできない。これら102名が全員未就労で求職中とは限らず、弁護士登録をせず法曹以外の道に進んでいるものも相当数含まれていると考えられる。但し、119名で顕著なのは、女性が半数近くを占めていることで、新64期の男女比を考えれば異例である。事務所採用での事実上の男性優遇が反映しているのであろうか。
いわゆる法曹三者の職に進んだ新64期生のうち、裁判官・検察官任官は相変わらず横ばいであり、弁護士事務所採用は1,568名とほぼ横ばいであり、即独は全体で54名と横ばいとなった。我が国の弁護士業界規模の増大が見込めない状況で、エントリーレベルでの新人の求人が頭打ちになっている。
一方、新64期と同じ2010年に司法試験に合格しても司法修習に行かない者は、前年の22名から52名と急増しており、新64期生で企業への就職で組織内弁護士となった83名を合わせるとこれまででいわゆる任官と法律事務所以外に進んだ者がこれまでで最も多くなった。前述の119名のうち企業就職をしたものもいると見られ、企業や官公庁など新しい職域で弁護士登録をせずに働き始める修了生の数も増えてきている。我が国の企業や官公庁などの組織内で、弁護士登録を要しない修了生に対する需要が現実にあることを示している。法定弁護士をモデルとした法曹養成システムに固執しなければ、修了生(法律専門家)に対する社会のニーズは、比較的容易に顕在化する可能性がある。従い、弁護士事務所就職が頭打ちという理由で司法試験合格者数を減らすなら、こうした新しいタイプの修了生に対する社会のニーズは満たされないであろう。
新司法試験制度の下、約2,000名の合格者が毎年社会に出ているため、これまで長年続いてきた法曹資格者の需給バランスが崩れ始め、事務所での初任給の低下傾向が著しくなり、事務所への就職が一層競争的になってきている。こうした法曹有資格者(=司法試験合格者)の供給余力の圧力は、これまで就職先として修了生が必ずしも考えてこなかった官公庁や企業等の新しい職域に修了生を向かわせてきている。 また、徐々にではあるが、新しい職域に弁護士事務所から若手人材が移動し始め、中途採用・転職市場が形成され始めている。世界的に見て景気の停滞もあり弁護士業務は停滞気味で業務拡大も見込みにくいこともあり、エントリーレベルの新人弁護士の事務所採用は今後も低調に推移していくものと思われ、この新しい職域への動きは、経験数年以内の若手弁護士の転職も加え一層加速していくであろう。現に、本年度の司法試験合格者には明らかに過去と異なる就職活動パターンがみられる。
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- 本調査は、官報、最高裁判所広報課へのヒアリングや2012年1月時点・4月時点・6月時点の日本弁護士連合会等の公表データをもとに作成しています。
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