~リーマン・ショック後の弁護士就職状況は徐々に改善!~
ジュリナビ運営事務局は、2015年1月末時点の67期司法修習終了者の就職状況を、公的に公開されている情報を元に調査しました。67期の司法修習を終了した法曹資格者は、全体で1,973名、66期の2,034名と比べ若干減少しています。うち、判事補採用は101名、検事採用は74名でした。弁護士登録者数は1,452名、未登録者数は266名となっています。66期の同時期と比べ未登録者数の割合はやや減少しました。
ただし、67期司法修習を予定していて司法修習に行かなかった平成25年度司法試験合格者は、80名とこれまでになく多かったのが特徴的でした。このうちの相当数は司法修習に行かず企業や官公庁に就職したものと推定されますが、その実態については公表されていません。法曹有資格者の活用状況を知るためにも正確なデータの公表が望まれます。
I 67期司法修習生と就職状況
67期 (2015年1月調査) |
66期 (2014年1月調査) |
|
---|---|---|
平成25年新司法試験合格者 | 2,049 | 2,102 |
67期司法修習終了者 | 1,969 | 2,035 |
二回試験受験者 | 2,015 | 2,077 |
二回試験合格者 | 1,973 | 2,034 |
新規法曹有資格者 | 1,973 | 2,034 |
検事採用者 | 74 | 81 |
判事補採用者 | 101 | 96 |
弁護士登録者 | 1,532 | 1,566 |
弁護士未登録者 | 266 (13.5%) |
291 (14.3%) |
弁護士登録者 | 1,532 | 1,566 |
事務所所属 (組織内弁護士・即独推定者を除く) |
1,411 (71.5%) |
1,467 (72.1%) |
組織内弁護士(企業・官公庁・その他団体) | 72 (3.6%) |
46 (2.3%) |
即独推定者 | 49 (2.5%) |
53 (2.6%) |
(※ カッコ内の数値は全体に対する新規法曹有資格者の割合)
Ⅱ 67期新人弁護士の事務所採用状況
~4大事務所の新人弁護士採用~
景気の回復により企業活動が活発化したことを受けて、大手事務所は、67期司法修習生の採用に積極的でした。4大事務所は過去最大の採用であった62期採用に迫る113名を採用しました。(ところで、1月時点の弁護士所属数に基づくとアンダーソン・毛利・友常法律事務所とTMI総合法律事務所のランキングが逆転しました。しかし、アンダーソン・毛利・友常法律事務所はビンガム・坂井・三村・相澤法律事務所との統合が予定され、その時点で再逆転することになります。従い、今回の調査では、継続性を保つため従来通りの4大事務所の採用数を検討してみました。)また、全体として67期の法律事務所採用も、66期と比べ、活発に推移しています。
4大事務所新人弁護士採用数 期別推移表
事務所名・所属 | 62期 採用数 |
63期 採用数 |
64期 採用数 |
65期 採用数 |
66期 採用数 |
67期 採用数 |
|
1 | 西村あさひ | 46 | 32 | 17 | 18 | 25 | 34 |
2 | 長島・大野・常松 | 30 | 23 | 19 | 26 | 19 | 30 |
3 | 森・濱田松本 | 26 | 19 | 13 | 22 | 32 | 27 |
4 | アンダーソン・毛利・友常 | 28 | 27 | 18 | 15 | 14 | 22 |
総計 | 130 | 101 | 67 | 81 | 90 | 113 |
67期採用数ランキングトップ10
4大事務所に続く企業系の法律事務所にも同様の採用傾向が見られました。4大事務所に加え、TMI総合法律事務所が採用数を増やし、弁護士所属数で5大事務所としての実体を持つようになってきました。一方、全国展開などの新しいビジネスモデルで成長してきた事務所は、従来の準大手事務所を凌ぐ新人採用の受け皿になっています。
順位 | 法人・事務所名 |
都道府県(※1) | 所属人数(※2) |
67期採用人数 | 66期採用人数 |
1 | 西村あさひ法律事務所 | 東京都 | 505 | 34↑ | 25 |
2 | 弁護士法人アディーレ法律事務所 | 東京都 | 140 | 31↑ | 12 |
3 | 長島・大野・常松法律事務所 | 東京都 | 326 | 30↑ | 19 |
4 | 森・濱田松本法律事務所 | 東京都 | 358 | 27↓ | 32 |
4 | TMI総合法律事務所 | 東京都 | 324 | 27↑ | 26 |
6 | アンダーソン・毛利・友常法律事務所 | 東京都 | 320 | 22↑ | 14 |
7 | 弁護士法人朝日中央綜合法律事務所 | 東京都 | 51 | 17↑ | 10 |
8 | 弁護士法人ベリーベスト法律事務所 | 東京都 | 81 | 16↑ | 13 |
9 | 弁護士法人大江橋法律事務所 | 大阪府 | 124 | 9↑ | 5 |
9 | 弁護士法人アヴァンセリーガルグループ | 東京都 | 47 | 9↓ | 10 |
(※1 主事務所所在地)
(※2 従事務所所属弁護士、外国法事務弁護士、提携事務所所属弁護士含む)
Ⅲ 事務所採用人数別の分布割合と弁護士会別登録数
~事務所の組織化の進行と大規模事務所新人弁護士採用~
所属弁護士数が50名以上の事務所の司法修習終了者採用数の、全体に占める割合は65期11.4%、66期12.7%、67期18.1%と増加してきています。所属弁護士数10名以上の事務所でみれば、65期31.3%、66期34.6%、67期42.2%であり、法律事務所の組織化も徐々に進んできており、こうした組織化された規模の大きな事務所が新人採用の受け皿になってきているようです。
また、大規模事務所の多い東京三会の弁護士登録数も同様に高い伸びを示しました。
67期事務所採用人数別の分布割合
事務所人数 | 事務所数 | 67期採用数 | ||
事務所数 | 構成比 | 人数 | 構成比 | |
50名以上 | 21 | 2.2% | 257 | 18.1% |
10~49名 | 186 | 19.1% | 342 | 24.1% |
3~9名 | 569 | 58.5% | 630 | 44.3% |
2名以下 | 196 | 20.2% | 192 | 13.5% |
総計 | 972 | 100.0% | 1,421 | 100.0% |
66期事務所採用人数別の分布割合
事務所人数 | 事務所数 | 66期採用数 | ||
事務所数 | 構成比 | 人数 | 構成比 | |
50名以上 | 20 | 1.9% | 190 | 12.7% |
10~49名 | 196 | 18.1% | 329 | 21.9% |
3~9名 | 576 | 53.3% | 669 | 44.6% |
2名以下 | 289 | 26.7% | 311 | 20.7% |
合計 | 1,081 | 100.0% | 1,499 | 100.0% |
65期事務所採用人数別の分布割合
事務所人数 | 事務所数 | 65期採用数 | ||
事務所数 | 構成比 | 人数 | 構成比 | |
50名以上 | 16 | 1.4% | 177 | 11.4% |
10~49名 | 182 | 16.0% | 310 | 19.9% |
3~9名 | 661 | 58.0% | 785 | 50.4% |
2名以下 | 280 | 24.6% | 285 | 18.3% |
総計 | 1,057 | 100.0% | 1,557 | 100.0% |
67期弁護士会別採用人数
弁護士会 | 67期採用人数 | 66期採用人数 |
東京 | 299 | 289 |
第二東京 | 216 | 200 |
第一東京 | 210 | 171 |
大阪 | 169 | 163 |
愛知県 | 98 | 94 |
福岡県 | 64 | 62 |
横浜 | 58 | 69 |
埼玉 | 35 | 35 |
兵庫県 | 35 | 39 |
札幌 | 34 | 41 |
千葉県 | 33 | 29 |
京都 | 24 | 32 |
仙台 | 23 | 22 |
広島 | 18 | 29 |
岡山 | 16 | 27 |
静岡県 | 16 | 21 |
茨城県 | 11 | 20 |
群馬 | 11 | 15 |
福島県 | 11 | 11 |
熊本県 | 9 | 15 |
新潟県 | 9 | 12 |
栃木県 | 9 | 7 |
愛媛 | 8 | 6 |
長野県 | 7 | 12 |
山口県 | 7 | 10 |
香川県 | 7 | 9 |
岐阜県 | 7 | 9 |
大分県 | 7 | 8 |
沖縄 | 7 | 6 |
長崎県 | 7 | 5 |
三重 | 6 | 11 |
島根県 | 6 | 2 |
鹿児島県 | 5 | 11 |
佐賀県 | 5 | 6 |
奈良 | 5 | 2 |
旭川 | 5 | 0 |
金沢 | 4 | 9 |
鳥取県 | 4 | 3 |
岩手 | 4 | 3 |
青森県 | 4 | 6 |
宮崎県 | 3 | 8 |
山形県 | 3 | 6 |
和歌山 | 2 | 8 |
徳島 | 2 | 3 |
福井 | 2 | 2 |
富山県 | 2 | 1 |
山梨県 | 1 | 10 |
滋賀 | 1 | 3 |
秋田 | 1 | 2 |
函館 | 1 | 2 |
釧路 | 1 | 1 |
高知 | 0 | 0 |
総計 | 1,532 | 1,566 |
Ⅳ 67期企業及びその他法人の採用一覧・採用人数
企業及びその他法人の司法修習終了者の採用は72名であり、66期のこの時点と比べ、若干増加しています。その約70%が東京所在の企業で占められており、弁護士業務の東京の一極集中がここにも表れています。この増加は、企業業績の回復により企業の間接部門の採用活動が復活したとも言えます。特に、ジュリナビですでに報告しているように、本年1月時点で組織内弁護士数は1,442名となっています。
この増加は経験弁護士の中途採用によるものです。一方、これまで新人弁護士の採用は、こうした組織内弁護士数の著しい増加と比較して、毎年100名を超えることなく推移しています。企業法務の実務経験を積んだ弁護士と比べて企業にとり司法修習終了者の魅力が薄いとも言えます。また、実務経験を積む前では司法修習終了者の旧法曹三者の職への執着が強いこともあるのでしょう。
法人名 | 都道府県 | 人数 |
ヤフー株式会社 | 東京都 | 4 |
野村證券株式会社 | 東京都 | 3 |
株式会社三菱東京UFJ銀行 | 東京都 | 2 |
SBSホールディングス株式会社 | 東京都 | 2 |
エーザイ株式会社 | 東京都 | 2 |
両備経営サポートカンパニー | 岡山県 | 2 |
ソフトバンク株式会社 | 東京都 | 2 |
三菱自動車工業株式会社 | 東京都 | 2 |
住友化学株式会社 | 東京都 | 2 |
株式会社PFU | 神奈川県 | 2 |
双日株式会社 | 東京都 | 2 |
尾池工業株式会社 | 京都府 | 1 |
株式会社福地興産 | 大阪府 | 1 |
株式会社三井住友銀行 | 東京都 | 1 |
TOA株式会社 | 兵庫県 | 1 |
フタバ産業株式会社 | 愛知県 | 1 |
王子マネジメントオフィス株式会社 | 東京都 | 1 |
シャープ株式会社 | 大阪府 | 1 |
KOA株式会社 | 長野県 | 1 |
株式会社小松製作所 | 東京都 | 1 |
株式会社アクトコール | 東京都 | 1 |
三井海洋開発株式会社 | 東京都 | 1 |
株式会社オプト | 東京都 | 1 |
住友生命保険相互会社 | 東京都 | 1 |
株式会社オリエントコーポレーション | 東京都 | 1 |
システム・インテグレーション株式会社 | 東京都 | 1 |
株式会社クボタ | 東京都 | 1 |
株式会社鴻池組 | 大阪府 | 1 |
株式会社サニックス | 福岡県 | 1 |
SMBCコンシューマーファイナンス株式会社 | 東京都 | 1 |
税理士法人山田&パートナーズ | 東京都 | 1 |
株式会社日本政策金融公庫 | 東京都 | 1 |
倉敷地所株式会社 | 岡山県 | 1 |
共栄火災海上株式会社 | 東京都 | 1 |
鳥取県庁 | 鳥取県 | 1 |
三井住友トラスト・パナソニックファイナンス株式会社 | 東京都 | 1 |
凸版印刷株式会社 | 東京都 | 1 |
プライスウォーターハウスクーパース株式会社 | 東京都 | 1 |
日本テクノ株式会社 | 東京都 | 1 |
フリージアトレーディング株式会社 | 東京都 | 1 |
日本ビジネスシステムズ株式会社 | 東京都 | 1 |
株式会社ジェイテクト | 大阪府 | 1 |
第一生命保険株式会社 | 東京都 | 1 |
株式会社タカラトミー | 東京都 | 1 |
東海旅客鉄道株式会社 | 愛知県 | 1 |
株式会社ナンバー | 東京都 | 1 |
日本コープ共済生活協同組合連合会 | 東京都 | 1 |
株式会社ニデック | 愛知県 | 1 |
日本ピグメント株式会社 | 東京都 | 1 |
株式会社ハークスレイ | 大阪府 | 1 |
日本ヒューレット・パッカード株式会社 | 東京都 | 1 |
株式会社パレード | 東京都 | 1 |
明石市役所 | 兵庫県 | 1 |
株式会社みなと銀行 | 兵庫県 | 1 |
有明国際特許事務所 | 東京都 | 1 |
株式会社ユーシン | 東京都 | 1 |
JSR株式会社 | 東京都 | 1 |
株式会社京都西川 | 京都府 | 1 |
総計 | 72 |
Ⅴ 67期即独推定者数
毎年話題になる即独推定者は47名(新規法曹有資格者全体の2.4%)で、66期(新規法曹有資格者全体の2.6%)と比べ、やや減少しました。例年、即独推定者は、半年くらいの間に事務所や企業に就職して落ち着く傾向が見られます。
即独推定者 | 性別 | 人数 |
事務所名あり | 男性 | 37 |
女性 | 2 | |
事務所名なし | 男性 | 6 |
女性 | 2 | |
総計 | 47 |
出典・免責事項・引用・転載等について
- 本調査は、最高裁判所広報課へのヒアリングや2015年1月現在の官報や日本弁護士連合会等の公表データをもとに作成しています。また、62~66期生の採用数については、過去の「ジュリナビ」運営事務局調べ「司法修習生進路調査速報」 より引用しています。
- 本調査はできるだけ正確性を保つよう合理的な努力をしましたが、所属弁護士数は日々変動し、かつ異動情報がタイムリーに日本弁護士連合会に提供されるとは限らないため、調査結果についてジュリナビとして完全性、正確性を保証するものではありません。
- 本調査に記載されたコメントはジュリナビ自身の見解であり、法科大学院協会や各法科大学院の見解とは一切関係はありません。
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