68期司法修習終了者の就職状況調査

career-survey

~初めての司法試験合格者1,800名台の司法修習終了者の就職~

ジュリナビ運営事務局は、2016年1月末時点の68期司法修習終了者の就職状況を、公開されている情報をもとに調査しました。今回の68期司法修習終了者は、これまで司法試験合格者数が2,000名前後であった過去と異なり、1,810名と初めての大幅な減少となったことです。これまでと比べ約200名近い司法試験合格者数が減らされた理由について公に明らかにされていません。
司法試験合格者数が約1割減になった68期の司法修習終了者の就職状況がこれまでとどのように変わるのか、今後の法曹人口の検討のためにも調査が必要だと考えます。

68期の司法修習を終了した法曹資格者は1,766名であり、67期と比べ約200名も減少しています。うち、判事補採用は91名、検事採用は76名であり、法曹資格者数が67期と比べ大幅に減ったにもかかわらず67期とそれぞれ大差はありませんでした。弁護士登録者数は1,408名、未登録者数は191名(もちろん過去の統計から半年後の6月末にはその数は半減していると推定されます)であり、67期と比べ、未登録者の割合が13.5%から10.8%に下がり、即独推定者は2.4%から1.4%へと減少しました。

平成26年度司法試験合格者数のうち司法修習に行かなかった司法試験合格者は49名と前年の80名と比べ大幅に減少したのが目立ちました。平成27年度の司法試験合格者で司法修習に行かなかった者は、司法試験合格者数が若干増加したにも関わらず63名と大きく増加しましたので、例外的であったかもしれません。司法修習に行かない司法試験合格者は、官公庁、企業、研究組織に就職していると推定されます。

I  68期司法修習生と就職状況
68期
(2016年1月調査)
67期
(2015年1月調査)
司法試験合格者 1,810 2,049
司法修習終了者 1,766 1,969
二回試験受験者 1,799 2,015
二回試験合格者 1,766 1,973
新規法曹有資格者 1,766 1,973
検事採用者 76 74
判事補採用者 91 101
弁護士登録者 1,408 1,532
弁護士未登録者 191
(10.8%)
266
(13.5%)
弁護士登録者 1,408 1,532
事務所所属
(組織内弁護士・即独推定者を除く)
1,320
(74.7%)
1,413
(71.6%)
組織内弁護士
(企業・官公庁・その他団体)
62
(3.5%)
72
(3.6%)
即独推定者 26
(1.5%)
47
(2.5%)

(※ カッコ内の数値は全体に対する新規法曹有資格者の割合)

Ⅱ 68期新人弁護士の事務所採用状況

~5大事務所の新人弁護士採用はリーマンショック前を超える~

今回は、TMI総合法律事務所を加え5大事務所の新人弁護士採用の状況を報告することにしました。5大事務所は、わが国の主要な企業の多くを代理しておりその新人弁護士の採用状況は、企業取引に係るわが国の法律業務量の動きを間接的に示すものと言えます。以下の表で明らかなように、法科大学院制度のもとに増加した新人法曹を大手事務所は積極的に活用してきました。

ところが、リーマンショックによる世界的な景気低迷とそれに伴う企業関係の法律業務の大幅な減少のため、64期に一挙に5大事務所は新人弁護士採用数を減らしました。しかし、景気回復とともに再び新人弁護士採用数を増やし、68期司法修習終了者の採用は154名とリーマンショック前を超えました。68期司法修習終了者数が、昨年比で約200名も減少していることを考えると5大事務所の採用数増加が目立ちます。わが国の弁護士業界では、企業取引を中心とする業務が近年増加し、それが新人弁護士需要の強さにつながっていることがわかります。

5大事務所新人弁護士採用数 期別推移表

事務所名・所属 62期
採用数
63期
採用数
64期
採用数
65期
採用数
66期
採用数
67期
採用数
68期
採用数
1 西村あさひ 46 32 17 18 25 34 35
2 アンダーソン・毛利・友常 28 27 18 15 14 22 44
3 森・濱田松本 26 19 13 22 32 27 26
4 長島・大野・常松 30 23 19 26 19 30 27
5 TMI総合 15 15 14 17 26 27 22
総計 145 116 81 98 116 140 154

68期採用数ランキングトップ10

採用数トップ10位の法律事務所は以下の通りです。5大事務所と新しい業務形態の2事務所が二桁の採用数となっています。8位以下は一桁であり大きな差ができているのが特徴的です。このグループには合併をした弁護士法人響と虎ノ門法律経済事務所が新しくランクインしました。5大事務所の中ではアンダーソン・毛利・友常法律事務所が昨年の倍の採用をしたのが目につきます。
また、大阪の大江橋法律事務所を除けばすべて東京の事務所が上位を占めておりここにも東京中心の採用マーケットの状況が現れています。

順位 法人事務所
都道府県(※1) 所属人数(※2)
68期採用人数 67期採用人数
1 アンダーソン・毛利・友常法律事務所 東京都 403 44 22
2 西村あさひ法律事務所 東京都 515 35 34
3 長島・大野・常松法律事務所 東京都 360 27 30
3 弁護士法人ベリーベスト法律事務所 東京都 105 27 16
5 森・濱田松本法律事務所 東京都 366 26 27
5 弁護士法人アディーレ法律事務所 東京都 160 26 31
7 TMI総合法律事務所 東京都 356 22 27
8 弁護士法人大江橋法律事務所 大阪府 131 9→ 9
8 弁護士法人響 東京都 25 9 3
8 弁護士法人朝日中央綜合法律事務所 東京都 47 9 17
8 虎ノ門法律経済事務所 東京都 70 9 5

(※1 主事務所所在地)
(※2 従事務所所属弁護士、外国法事務弁護士、提携事務所所属弁護士は含まない)

Ⅲ 事務所採用人数別の分布区分と弁護士会別登録数

~事務所の組織化の進行と東京集中~

新人弁護士採用先の法律事務所の規模別分布過去3年間の推移は以下の通りです。所属弁護士数が50名以上の事務所が全体の新人弁護士採用数に占める割合が徐々に増加しています。所属弁護士数が10名~49名の事務所の全体に占める割合も同様に増加しています。
一方、所属弁護士数が2名以下の小規模事務所の新人弁護士採用数に占める割合は、事務所数とともに急速に低下しています。個人事務所形態の小規模法律事務所の統合が今後も進んでいくと思われます。
このことは、変化の速度は遅いもののわが国の法律事務所の組織化が毎年進んでいることを表していると言えるでしょう。しかし、国際的にみると法律事務所の組織化、それに伴う専門化と分業化は遅れています。

68期事務所採用人数別の分布割合

事務所人数 事務所数 68期採用数
事務所数 構成比 人数 構成比
50名以上 17 2.0% 263 19.9%
10~49名 214 25.5% 368 27.9%
3~9名 486 58.0% 568 43.0%
2名以下 121 14.4% 121 9.2%
総計 838 100.0% 1,320 100.0%

67期事務所採用人数別の分布割合

事務所人数 事務所数 67期採用数
事務所数 構成比 人数 構成比
50名以上 21 2.2% 257 18.1%
10~49名 186 19.1% 342 24.1%
3~9名 569 58.5% 630 44.3%
2名以下 196 20.2% 192 13.5%
総計 972 100.0% 1,421 100.0%

66期事務所採用人数別の分布割合

事務所人数 事務所数 66期採用数
事務所数 構成比 人数 構成比
50名以上 20 1.9% 190 12.7%
10~49名 196 18.1% 329 21.9%
3~9名 576 53.3% 669 44.6%
2名以下 289 26.7% 311 20.7%
合計 1,081 100.0% 1,499 100.0%

新人弁護士採用の東京集中の進行

司法修習終了者の法律事務所採用における東京集中の傾向は以下の表のとおり明らかになってきています。この傾向は、前述の東京に集中する企業取引を中心とする大規模及び中規模事務所の司法修習終了者採用数が伸びていることと軌を一にしているといえるでしょう。また、後述するように新しい職域としての組織内弁護士の職も東京に集中しています。
東京三会の弁護士の全国の弁護士に占める割合は、過去3年46%台で推移してきましたが、司法修習終了者の最初の所属先弁護士会に東京三会が占める割合が、2014年から全国平均を上回ってきています。

68期弁護士会別採用人数

弁護士会 68期採用人数 67期採用人数
東京 276 299
第二東京 233 216
第一東京 199 210
大阪 166 169
愛知県 78 98
横浜 59 58
福岡県 49 64
埼玉 31 35
兵庫県 29 35
千葉県 26 33
京都 26 24
札幌 25 34
広島 22 18
静岡県 15 16
岡山 13 16
仙台 12 23
茨城県 12 11
山口県 10 7
香川県 9 7
沖縄 9 7
群馬 8 11
福島県 8 11
鹿児島県 8 5
新潟県 7 9
愛媛 6 8
長野県 6 7
三重 6 6
熊本県 5 9
旭川 5 5
金沢 5 4
和歌山 5 2
大分県 4 7
佐賀県 4 5
宮崎県 4 3
栃木県 3 9
岩手 3 4
福井 3 2
釧路 3 1
岐阜県 2 7
長崎県 2 7
奈良 2 5
青森県 2 4
徳島 2 2
山梨県 2 1
鳥取県 1 4
山形県 1 3
富山県 1 2
函館 1 1
島根県 0 6
滋賀 0 1
秋田 0 1
高知 0 0
総計 1,408 1,532

Ⅳ 68期企業及びその他法人の採用一覧・採用人数

企業及びその他法人採用のいわゆる組織内弁護士採用は、62名であり、司法修習終了者全体の3.5%でした。組織内弁護士の弁護士登録は、4月以降に増加する傾向がありますので今後その数は増加するものと思われます。67期と比べると司法試験合格者数が減ったため数では減少しましたが、組織内弁護士が全体に占める割合は、あまり変化ありません。後述するように、組織内弁護士の中途採用が伸びていることを考えると、司法修習終了者の資質が必ずしも企業やその他法人の要求するものに合致していないのか、あるいは、組織内での養成や教育が難しいのか、その理由を究明すべきではないでしょうか。

一方、わが国の組織内弁護士数は、経験弁護士の中途採用を経て着実に増加しており、2015年6月末時点では1,571名となり、その約7割は、修了生です。特に、昨年は一昨年と比べ3割以上増加しており、今後も組織内弁護士の修了生の割合は高まっていくでしょう。このことから、企業やその他法人の法務は、法科大学院制度により大きなメリットを受けているといえるでしょう。 米国では弁護士事務所で一程度の経験を積んだ弁護士が企業法務に移るルートが確立されていますが、徐々にわが国でもそうしたルートが定着しつつあるようです。

なお、組織内弁護士の就職先地域は、企業の本社機能が東京に集中しており法務部門もそこに存在しているため、東京が全体の約8割で推移しています。この傾向に毎年大きな変化は見られません。

法人名 都道府県 人数
株式会社三菱東京UFJ銀行 東京都 4
ヤフー株式会社 東京都 3
明治安田生命保険相互会社 東京都 3
山田&パートナーズ 東京都 3
株式会社荏原製作所 東京都 2
日油株式会社 東京都 2
株式会社ニデック 愛知県 2
株式会社堀場製作所 京都府 2
HOYAサービス株式会社 東京都 1
JFEスチール株式会社 東京都 1
PSP株式会社 東京都 1
トピー工業株式会社 東京都 1
岡三証券株式会社 東京都 1
花王株式会社 東京都 1
株式会社MediBang 東京都 1
株式会社エフエム東京 東京都 1
株式会社ドン・キホーテシェアードサービス 東京都 1
株式会社ニコン 東京都 1
株式会社リクルートスタッフィング 東京都 1
株式会社高松コンストラクショングループ 東京都 1
株式会社三井住友銀行 東京都 1
株式会社住宅債権管理回収機構 東京都 1
株式会社駐車場綜合研究所 東京都 1
株式会社日清製粉グループ本社 東京都 1
株式会社日立物流 東京都 1
共栄火災海上保険株式会社 東京都 1
債権回収株式会社 東京都 1
三菱自動車工業株式会社 東京都 1
三菱商事株式会社 東京都 1
住友電気工業株式会社 東京都 1
曙ブレーキ工業株式会社 東京都 1
全国保証株式会社 東京都 1
双日株式会社 東京都 1
日本生命保険相互会社 東京都 1
日本郵便株式会社 東京都 1
豊田通商株式会社 東京都 1
野村ホールディングス株式会社 東京都 1
全国共済農業協同組合連合会 東京都 1
SK特許業務法人 東京都 1
白崎国際特許事務所 東京都 1
医療法人医誠会 大阪府 1
武田薬品工業株式会社 大阪府 1
豊橋市役所 愛知県 1
エー・シー・エス債権管理回収株式会社 千葉県 1
CYBERDYNE株式会社 茨城県 1
株式会社エブリイ 広島県 1
株式会社クロスカンパニー 岡山県 1
社会福祉法人クムレ 岡山県 1
株式会社琉球銀行 沖縄県 1
総計 62

 

 業種  人数
業種:金融 17
業種:メーカー 16
業種:IT 6
業種:サービス 8
業種:その他 6
公的機関・その他団体 9
総計 62

Ⅴ 68期即独推定者数

68期司法修習終了者のうち即独と推定されるもの26名は(新規曹有資格者全体の1.4%)でした。67期司法修習終了者の場合、同時期で、49名、全体の2.4%でした。新規法曹有資格者の数が減少したこと景気回復で事務所採用が伸びたことが影響したようです。今後も弁護士事務所就職や企業就職などでその数は減って行くものと思われます。

即独推定者 性別 人数
事務所名あり 男性 19
女性 3
事務所名なし 男性 3
女性 1
総計 26
出典・免責事項・引用・転載等について
  1. 本調査は、最高裁判所広報課へのヒアリングや2016年1月現在の官報や日本弁護士連合会等の公表データをもとに作成しています。また、62~67期生の採用数については、過去の「ジュリナビ」運営事務局調べ「司法修習生進路調査速報」 より引用しています。
  2. 本調査はできるだけ正確性を保つよう合理的な努力をしましたが、所属弁護士数は日々変動し、かつ異動情報がタイムリーに日本弁護士連合会に提供されるとは限らないため、調査結果についてジュリナビとして完全性、正確性を保証するものではありません。
  3. 本調査に記載されたコメントはジュリナビ自身の見解であり、法科大学院協会や各法科大学院の見解とは一切関係はありません。
  4. 本調査に記載された調査、編集、分析された内容についてその一部又は全部につきジュリナビに無断で転載、掲載することを禁止させていただきます。
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