71期司法修習終了者の就職状況 ~6月時点~

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司法修習終了者1,500名台時代の就職状況

ジュリナビは71期司法修習終了者の6月末時点の就職状況調査を行いました。司法修習終了から6ヶ月が経過し、この数字が71期司法修習終了者の就職状況を最終的に表しているものとみなせるでしょう。

参考として、71期司法修習終了者の就職状況調査の1月時点調査4月時点調査および比較のため70期司法修習終了者の6月時点調査の数値も掲載しました。

弁護士登録者数は、4月末時点から7名増の1,337名、司法修習終了者の全体に占める割合で見ると88.1%であり、70期の89.2%とほとんど同じになりました。今回の71期司法修習終了者の就職状況の調査結果からみれば、司法試験合格者数を1,500名程度に減らした結果は、全体の縮小均衡を生んだということになります。

弁護士未登録者は、4月末時点から7名減の29名であり、司法修習終了者の全体に占める割合で1.9%となっています。70期の弁護士未登録者は37名、司法修習終了者の全体に占める割合は2.4%であり、あまり変わらない割合となりました。

弁護士登録者の内訳は、法律事務所所属の弁護士が4月末時点の1,229名(司法修習終了者の全体に占める割合81.0%)から3名減少し、1,226名(司法修習終了者の全体に占める割合80.8%)となりました。69期までは、司法修習終了後から6月末時点まで事務所所属弁護士数は増加し続けていましたが、70期と71期では、4月末時点から6月末時点で減少する結果となりました。わずか半年足らずの短い間ですが、この間に法律事務所以外への転職者が出た結果です。

組織内弁護士は、若干増加して78名、司法修習終了者の全体に占める割合は5.1%になりました。しかし、70期の87名に比して、組織内弁護士は減少する結果となりました。即独推定者は、微増して33名(2.2%)になりました。

71期司法修習終了者 就職状況

2019年
1月時点
2019年
4月時点
2019年
6月時点
男女別人数 2018年
6月時点
(70期)
男性 女性
司法試験合格者 1,543 1,583
司法修習採用者 1,516 1,197 319
[21.0%]
1,563
司法修習終了者
(新規法曹有資格者)
1,517 1,198 319 1,563
判事補採用者 82
(5.4%)
61 21
[25.6%]
65
(4.2%)
検事採用者 69
(4.5%)
48 21
[30.4%]
67
(4.3%)
弁護士登録者 1,267
(83.5%)
1,330
(87.7%)
1,337
(+70)
(88.1%)
1,063 274
[20.5%]
1,394
(89.2%)
未登録者 99
(6.5%)
36
(2.4%)
29
(-70)
(1.9%)
26 3
[10.3%]
37
(2.4%)
弁護士登録者 1,267
(83.5%)
1,330
(87.7%)
1,337
(+70)
(88.1%)
1,063 274
[20.5%]
1,394
(89.2%)
事務所所属(即独除く) 1,199
(79.0%)
1,229
(81.0%)
1,226
(+27)
(80.8%)
987 239
[19.5%]
1,272
(81.4%)
組織内弁護士
(企業・公的機関・その他団体)
52
(3.4%)
74
(4.9%)
78
(+26)
(5.1%)
48 30
[38.5%]
87
(5.6%)
即独推定者 16
(1.1%)
27
(1.8%)
33
(+17)
(2.2%)
28 5
[15.2%]
35
(2.2%)

※2019年6月時点の±の数値は1月末時点との増減。各年各月時点の( )内の%は新規法曹資格者全体に対する割合。女性列の[ ]内の%は各属性における女性割合。
※組織内弁護士には法テラスの弁護士も含みます。

弁護士会別の採用状況は東京一極集中が加速

71期と70期の6月末時点の弁護士会別登録状況は以下の通りです。東京三会の採用人数を見てみると、70期が計760名(54.5%)で新人弁護士の約2人に1人が東京で就職しているという状況でしたが、71期はその傾向がますます強まり、計743名(55.6%)となりました。5大事務所を筆頭に大手渉外事務所の採用拡大の影響で、東京への一極集中がますます進んでいるようです。

一方、地方は東京一極集中の影響もあり、全体として採用数を落としていますが、特に兵庫や広島などの主要都市でも採用割合が大きく減少しているのは注目すべき点でしょう。また、71期は宮崎県、大分県、釧路、旭川、秋田、高知が採用人数0名となっており、特に高知はこれで5年連続で新人弁護士の採用人数が0名となっています。

司法試験合格者数を減少させたことで、地方への法曹供給にしわ寄せが出ているようです。また、地方の法科大学院の閉校や募集停止によりさらに地方への法曹供給は少なくなっていくことが危惧されます。

弁護士会別採用人数

弁護士会 71期(2019年6月) 70期(2018年6月)
採用人数
( )内は女性の人数
割合 採用人数
( )内は女性の人数
割合
東京 273 (47) 20.4%↓ 296 (66) 21.2%
第一東京 267 (66) 20.0%↑ 236 (60) 16.9%
第二東京 203 (51) 15.2%↓ 228 (48) 16.4%
大阪 158 (38) 11.8%↑ 145 (35) 10.4%
愛知県 55 (6) 4.1%↓ 72 (9) 5.2%
福岡県 49 (10) 3.7%↑ 47 (9) 3.4%
神奈川県 37 (4) 2.8%↓ 57 (14) 4.1%
兵庫県 29 (7) 2.2%↑ 24 (3) 1.7%
千葉県 27 (6) 2.0%↓ 29 (5) 2.1%
札幌 25 (5) 1.9%↓ 28 (9) 2.0%
京都 23 (3) 1.7%→ 24 (7) 1.7%
埼玉 22 (4) 1.6%↓ 35 (6) 2.5%
仙台 15 (4) 1.1%→ 15 (3) 1.1%
岡山 14 (2) 1.0%↑ 12 (5) 0.9%
広島 10 (2) 0.7%↓ 11 (0) 0.8%
沖縄 10 (0) 0.7%↑ 4 (0) 0.3%
静岡県 9 (2) 0.7%↓ 15 (2) 1.1%
茨城県 8 (2) 0.6%↓ 12 (3) 0.9%
群馬 7 (2) 0.5%↓ 13 (5) 0.9%
栃木県 7 (0) 0.5%↑ 6 (3) 0.4%
熊本県 7 (3) 0.5%↑ 6 (1) 0.4%
鹿児島県 6 (2) 0.4%→ 5 (1) 0.4%
福島県 6 (0) 0.4%↑ 4 (0) 0.3%
新潟県 5 (0) 0.4%→ 5 (0) 0.4%
福井 5 (0) 0.4%↑ 2 (0) 0.1%
香川県 4 (1) 0.3%→ 4 (1) 0.3%
奈良 4 (0) 0.3%↑ 3 (0) 0.2%
山梨県 4 (0) 0.3%↑ 2 (0) 0.1%
和歌山 4 (0) 0.3%↑ 1 (1) 0.1%
三重 3 (0) 0.2%↓ 4 (2) 0.3%
富山県 3 (0) 0.2%→ 3 (1) 0.2%
山形県 3 (1) 0.2%↑ 1 (0) 0.1%
長野県 3 (0) 0.2%↑ 0 (0) 0.0%
金沢 2 (0) 0.1%↓ 6 (1) 0.4%
佐賀県 2 (0) 0.1%↓ 4 (0) 0.3%
愛媛 2 (0) 0.1%↓ 3 (1) 0.2%
長崎県 2 (0) 0.1%→ 2 (0) 0.1%
鳥取県 2 (1) 0.1%→ 2 (1) 0.1%
徳島 2 (0) 0.1%→ 1 (0) 0.1%
島根県 2 (0) 0.1%→ 1 (0) 0.1%
岩手 2 (2) 0.1%↑ 0 (0) 0.0%
滋賀 1 (1) 0.1%↓ 8 (3) 0.6%
岐阜県 1 (0) 0.1%↓ 5 (1) 0.4%
山口県 1 (1) 0.1%↓ 3 (0) 0.2%
青森県 1 (0) 0.1%→ 1 (0) 0.1%
函館 1 (0) 0.1%→ 1 (0) 0.1%
宮崎県 0 (0) 0.0%↓ 5 (0) 0.4%
大分県 0 (0) 0.0%↓ 2 (2) 0.1%
釧路 0 (0) 0.0%↓ 1 (0) 0.1%
旭川 0 (0) 0.0%→ 0 (0) 0.0%
秋田 0 (0) 0.0%→ 0 (0) 0.0%
高知 0 (0) 0.0%→ 0 (0) 0.0%
総計 1,337 (274) 100.0% 1,394 (308) 100.0%

大規模事務所の拡大、小規模事務所の減少進む – 我が国のリーガルマーケットの変化の兆候

事務所規模別の採用状況を見てみると、司法修習終了者採用の所属弁護士9名以下の事務所数は、70期では計606(74.6%)だったのに対し、71期では計538(72.4%)に減少しています。司法修習終了者採用の所属弁護士9名以下の事務所数は、採用人数でも70期が計670名(51.5%)に対し、71期は計605名(48.1%)と割合を落としています。

これに対し、司法修習終了者採用の所属弁護士10名以上の事務所を見ると、事務所数は70期が206(25.3%)、71期は205(27.6%)となっており、わずか1事務所減ですが、全体に対する割合は増加しました。また、採用人数は全体の人数が減少する中で、司法修習終了者採用の所属弁護士10名以上の事務所は、70期の採用人数が計637名(48.7%)であるのに対し、71期は計654名(52.0%)と、同等の人数を保持し構成比を大きく伸ばしています。

既に、別報していますが、特に5大事務所はこのうち194名を占めており、法律事務所就職者の約15%となり司法修習終了者採用の大きな受け皿になりつつあります。規模の大きな法律事務所が採用を拡大し、司法修習終了者の最初の就職先として定着する一方、小規模事務所の採用は縮小し続けているようです。

71期事務所規模別の採用分布割合 (2019年6月)

事務所規模 事務所数 71期採用人数
事務所数 構成比 人数 構成比
50名以上 19 2.6% 327 (72) 26.0%
10~49名 186 25.0% 327 (61) 26.0%
3~9名 408 54.9% 473 (94) 37.6%
2名以下 130 17.5% 132 (17) 10.5%
総計 743 100.0% 1,259 (244) 100.0%

70期事務所規模別の採用分布割合 (2018年6月)

事務所規模 事務所数 事務所数割合 採用人数
( )内は女性の人数
採用人数割合
50名以上 19 2.3% 288 (61) 22.0%
10~49名 187 23.0% 349 (82) 26.7%
3~9名 479 59.0% 542 (111) 41.5%
2名以下 127 15.6% 128 (27) 9.8%
総計 812 100.0% 1,307 (281) 100.0%

(※ 即独推定者含む)

組織内弁護士採用は70期を下回る結果に

71期司法修習終了者の企業及びその他団体採用は78名で、昨年を下回りました。2019年4月時点の「ジュリナビ」運営会社である株式会社ジュリスティックスの調査によれば、組織内弁護士総数は、中途採用を中心にして2,450名と昨年比1割増と継続的に増加しています。71期司法修習終了者の組織内弁護士採用数は、ビジネス法務領域における弁護士ニーズの伸びが高い状況にも拘わらず、新人弁護士の供給がボトルネックになっていることを表しています。こうしたビジネス法務領域を中心とする組織内弁護士に対する需要に対し、法曹供給を抑制する法曹界は応えているとは言えません。

また、都道府県別で見てみると、組織内弁護士の約8割が東京で採用されており、次いで大阪や京都など、大企業の本社のある地域で採用されています。一方で、岡山など地方の中でも新人弁護士の採用に積極的な企業が存在しています。71期の組織内弁護士うち女性の占める割合は、70期の31%からさらに増加して38.5%であり、司法修習終了者全体に占める割合21.0%と比べ、組織内弁護士が女性法曹資格者の職域として人気の高いことがわかります。

71期採用企業・公的機関・その他団体一覧

法人名 都道府県 採用人数
株式会社三井住友銀行 東京都 3
株式会社三菱UFJ銀行 東京都 3
ヤフー株式会社 東京都 3
阪急阪神ホールディングス株式会社 大阪府 3
シャープ株式会社 大阪府 2
三菱重工業株式会社 東京都 2
野村證券株式会社 東京都 2
株式会社NTTドコモ 東京都 2
株式会社パン・パシフィックシェアードサービス 東京都 2
双日株式会社 東京都 2
税理士法人山田&パートナーズ 東京都 2
(その他1名採用企業) 52社 52
総計 78

71期企業・公的機関・その他団体の採用者の都道府県別割合

都道府県 採用人数
( )内は女性の人数
71期の組織内弁護士
全体に対する割合
東京都 63 (26) 80.8%
大阪府 9 (3) 11.5%
沖縄県 2 (0) 2.6%
宮城県 1 (0) 1.3%
京都府 1 (0) 1.3%
静岡県 1 (1) 1.3%
千葉県 1 (0) 1.3%
総計 78 (30) 100.0%

71期企業・公的機関・その他団体の採用者の業種別割合

事務所に就職するも即独する人は一定割合存在

71期司法修習終了者のうち即独推定者は、1月時点の16名(1.1%)から33名(2.2%)に増加しました。例年は、時の経過とともに即独推定者は減る傾向にありますが、今回調査の増加は一旦法律事務所に就職したものの退職し、即独になったものと推定されます。

71期即独推定者

即独推定者 1月時点
( )内は女性
6月時点
( )内は女性
1月時点との差分
( )内は女性
事務所名あり 13(2) 26 (3) +13 (+1)
事務所名なし 3(0) 7 (2) +4 (+2)
総計 16(2) 33 (5) +17 (+3)

(ジュリナビ運営事務局代表 鈴木修一)

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出典・免責事項・引用・転載等について
  1. 本調査は、官報、2019年各月時点の日本弁護士連合会等の公表データをもとに作成しています。
  2. 本調査はできるだけ正確性を保つよう合理的な努力をしましたが、所属弁護士数は日々変動し、かつ異動情報がタイムリーに日本弁護士連合会に提供されるとは限らないため、調査結果についてジュリナビとして完全性、正確性を保証するものではありません。
  3. 本調査に記載されたコメントはジュリナビ自身の見解であり、法科大学院協会や各法科大学院の見解とは一切関係はありません。
  4. 本調査に記載された調査、編集、分析された内容についてその一部又は全部につきジュリナビに無断で転載、掲載することを禁止させていただきます。
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