司法修習終了者1,500名台時代の就職状況
ジュリナビは72期司法修習終了者の６月末時点の就職状況調査を行いました。司法修習終了から６ヶ月が経過し、この数字が72期司法修習終了者の就職状況を最終的に表しているものとみなせるでしょう。
参考として、72期司法修習終了者の就職状況調査の１月時点調査 と４月時点調査 および比較のため71期司法修習終了者の６月時点調査の数値も掲載しました。
弁護士登録者数は、４月末時点から1名減、11名増の1,323名、司法修習終了者の全体に占める割合で見ると89.0％であり、71期の88.1％とほとんど同じになりました。今回の72期司法修習終了者の就職状況の調査結果からみれば、司法試験合格者数を1,500名程度に減らした結果は、全体の縮小均衡を生んだということになります。
弁護士未登録者は、４月末時点から10名減の24名であり、司法修習終了者の全体に占める割合で1.6％となっています。71期の弁護士未登録者は29名、司法修習終了者の全体に占める割合は1.9％であり、あまり変わらない割合となりました。
弁護士登録者の内訳は、法律事務所所属の弁護士が４月末時点の1,231名（司法修習終了者の全体に占める割合82.8％）から5名減少し、1,226名（司法修習終了者の全体に占める割合82.4％）となりました。69期までは、司法修習終了後から６月末時点まで事務所所属弁護士数は増加し続けていましたが、70期から72期では、４月末時点から６月末時点で減少する結果となりました。わずか半年足らずの短い間ですが、この間に法律事務所以外への転職者が出た結果です。
組織内弁護士は、４月末時点の61名から若干増加して65名、司法修習終了者の全体に占める割合は4.4％になりました。しかし、71期の78名に比して、組織内弁護士は減少する結果となりました。即独推定者は、微増して32名（2.2％）になりました。
72期司法修習終了者 就職状況
| 2020年 1月時点 |
2020年 4月時点 |
2020年 6月時点 |
男女別人数 | 2019年 6月時点(71期) |
||
| 男性 | 女性 |
|||||
| 司法試験合格者 | 1,525 | － | － | 1,543 | ||
| 司法修習採用者 | 1,482 | － | － | 1,516 | ||
| 司法修習辞退者 | 43 | － | － | 27 | ||
| 司法修習終了者 （新規法曹有資格者） |
1,487 | 1,127 | 360 | 1,517 | ||
| 判事補採用者 | 75 (5.0%) |
47 | 28 [37.3%] |
82 (5.4%) |
||
| 検事採用者 | 65 (4.4%) |
37 | 28 [43.1%] |
69 (4.5%) |
||
| 弁護士登録者 | 1,256 (84.5%) |
1,313 (88.3%) |
1,323 (+67) (89.0%) |
1,021 | 302 [22.8%] |
1,337 (88.1%) |
| 未登録者 | 91 (6.1%) |
34 (2.3%) |
24 (-67) (1.6%) |
22 | 2 [8.3%] |
29 (1.9%) |
| 弁護士登録者 | 1,256 (84.5%) |
1,313 (88.3%) |
1,323 (+67) (89.0%) |
1,021 | 302 [22.8%] |
1,337 (88.1%) |
| 事務所所属（即独除く） | 1,190 (80.0%) |
1,231 (82.8%) |
1,226 (+36) (82.4%) |
955 | 271 [22.1%] |
1,226 (80.8%) |
| 組織内弁護士 （企業・公的機関・その他団体） |
46 (3.1%) |
61 (4.1%) |
65 (+19) (4.4%) |
37 | 28 [43.1%] |
78 (5.1%) |
| 即独推定者 | 20 (1.3%) |
21 (1.4%) |
32 (+12) (2.2%) |
29 | 3 [9.4%] |
33 (2.2%) |
※2020年6月時点の±の数値は1月末時点との増減。各年各月時点の( )内の％は新規法曹資格者全体に対する割合。女性列の[ ]内の％は各属性における女性割合。
※組織内弁護士には法テラスの弁護士も含みます。
弁護士会別の採用状況は東京一極集中が加速
72期と71期の６月末時点の弁護士会別登録状況は以下の通りです。東京三会の採用人数を見てみると、71期が計743名（55.6％）で新人弁護士の約２人に１人が東京で就職しているという状況でしたが、72期はその傾向がますます強まり、計765名（57.8％）となりました。５大事務所を筆頭に大手渉外事務所の採用拡大の影響で、東京への一極集中がますます進んでいるようです。
一方、地方は東京一極集中の影響もあり、全体として採用数を落としていますが、特に大阪や兵庫などの主要都市でも採用割合が大きく減少しているのは注目すべき点でしょう。また、72期は奈良、山梨県、長崎県、島根県、釧路が採用人数０名となっており、特に釧路はこれで連続で新人弁護士の採用人数が０名となっています。
司法試験合格者数を減少させたことで、地方への法曹供給にしわ寄せが出ているようです。また、地方の法科大学院の閉校や募集停止によりさらに地方への法曹供給は少なくなっていくことが危惧されます。
弁護士会別採用人数
| 弁護士会 | 72期（2020年6月） | 71期（2019年6月） | ||
| 採用人数 ( )内は女性の人数 |
割合 | 採用人数 ( )内は女性の人数 |
割合 | |
| 第一東京 | 266 (58) | 20.1%↓ | 267 (66) | 20.0% |
| 第二東京 | 255 (60) | 19.3%↑ | 203 (51) | 15.2% |
| 東京 | 244 (69) | 18.4%↓ | 273 (47) | 20.4% |
| 大阪 | 133 (29) | 10.1%↓ | 158 (38) | 11.8% |
| 愛知県 | 72 (12) | 5.4%↑ | 55 (6) | 4.1% |
| 福岡県 | 48 (11) | 3.6%↓ | 49 (10) | 3.7% |
| 神奈川県 | 49 (9) | 3.7%↑ | 37 (4) | 2.8% |
| 京都 | 26 (6) | 2.0%↑ | 23 (3) | 1.7% |
| 埼玉 | 26 (5) | 2.0%↑ | 22 (4) | 1.6% |
| 千葉県 | 22 (6) | 1.7%↓ | 27 (6) | 2.0% |
| 札幌 | 20 (4) | 1.5%↓ | 25 (5) | 1.9% |
| 兵庫県 | 19 (4) | 1.4%↓ | 29 (7) | 2.2% |
| 岡山 | 13 (7) | 1.0%↓ | 14 (2) | 1.0% |
| 静岡県 | 12 (1) | 0.9%↑ | 9 (2) | 0.7% |
| 仙台 | 11 (1) | 0.8%↓ | 15 (4) | 1.1% |
| 広島 | 16 (6) | 1.2%↑ | 10 (2) | 0.7% |
| 群馬 | 8 (0) | 0.6%↑ | 7 (2) | 0.5% |
| 鹿児島県 | 7 (1) | 0.5%↑ | 6 (2) | 0.4% |
| 茨城県 | 6 (0) | 0.5%↓ | 8 (2) | 0.6% |
| 沖縄 | 5 (1) | 0.4%↓ | 10 (0) | 0.7% |
| 香川県 | 5 (2) | 0.4%↑ | 4 (1) | 0.3% |
| 栃木県 | 4 (0) | 0.3%↓ | 7 (0) | 0.5% |
| 福島県 | 4 (1) | 0.3%↓ | 6 (0) | 0.4% |
| 三重 | 4 (1) | 0.3%↑ | 3 (0) | 0.2% |
| 岐阜県 | 4 (0) | 0.3%↑ | 1 (0) | 0.1% |
| 山口県 | 4 (1) | 0.3%↑ | 1 (1) | 0.1% |
| 大分県 | 4 (0) | 0.3%↑ | 0 (0) | 0.0% |
| 熊本県 | 3 (0) | 0.2%↓ | 7 (3) | 0.5% |
| 長野県 | 3 (2) | 0.2%→ | 3 (0) | 0.2% |
| 青森県 | 3 (1) | 0.2%↑ | 1 (0) | 0.1% |
| 新潟県 | 2 (0) | 0.2%↓ | 5 (0) | 0.4% |
| 和歌山 | 2 (0) | 0.2%↓ | 4 (0) | 0.3% |
| 山形県 | 2 (1) | 0.2%↓ | 3 (1) | 0.2% |
| 金沢 | 2 (0) | 0.2%→ | 2 (0) | 0.1% |
| 佐賀県 | 2 (1) | 0.2%→ | 2 (0) | 0.1% |
| 愛媛 | 2 (0) | 0.2%→ | 2 (0) | 0.1% |
| 鳥取県 | 2 (0) | 0.2%→ | 2 (1) | 0.1% |
| 滋賀 | 2 (1) | 0.2%↑ | 1 (1) | 0.1% |
| 宮崎県 | 2 (0) | 0.2%↑ | 0 (0) | 0.0% |
| 旭川 | 2 (1) | 0.2%↑ | 0 (0) | 0.0% |
| 福井 | 1 (0) | 0.1%↓ | 5 (0) | 0.4% |
| 富山県 | 1 (0) | 0.1%↓ | 3 (0) | 0.2% |
| 徳島 | 1 (0) | 0.1%↓ | 2 (0) | 0.1% |
| 岩手 | 1 (0) | 0.1%↓ | 2 (2) | 0.1% |
| 函館 | 1 (0) | 0.1%→ | 1 (0) | 0.1% |
| 秋田 | 1 (0) | 0.1%↑ | 0 (0) | 0.0% |
| 高知 | 1 (0) | 0.1%↑ | 0 (0) | 0.0% |
| 奈良 | 0 (0) | 0.0%↓ | 4 (0) | 0.3% |
| 山梨県 | 0 (0) | 0.0%↓ | 4 (0) | 0.3% |
| 長崎県 | 0 (0) | 0.0%↓ | 2 (0) | 0.1% |
| 島根県 | 0 (0) | 0.0%↓ | 2 (0) | 0.1% |
| 釧路 | 0 (0) | 0.0%→ | 0 (0) | 0.0% |
| 総計 | 1323 (302) | 100.0% | 1337 (274) | 100.0% |
大規模事務所の拡大、小規模事務所の減少進む – 我が国のリーガルマーケットの変化の兆候
事務所規模別の採用状況を見てみると、司法修習終了者採用の所属弁護士９名以下の事務所数は、71期では計538（72.4％）だったのに対し、72期では計521（70.1％）に減少しています。司法修習終了者採用の所属弁護士９名以下の事務所数は、採用人数でも71期が計605名（48.1％）に対し、72期は計571名（45.4％）と割合を落としています。
それから、司法修習終了者採用の所属弁護士10名以上の事務所も、事務所数は71期が205（27.6％）、72期は209（28.1％）となっており、増加しました。また、採用人数は全体の人数が減少する中で、司法修習終了者採用の所属弁護士10名以上の事務所は、71期の採用人数が計654名（52.0％）であるのに対し、72期は計687名（54.7％）と、人数、構成比も大きく伸ばしています。
規模の大きな法律事務所が採用を拡大し、司法修習終了者の最初の就職先として定着する一方、小規模事務所の採用は縮小し続けているようです。
72期事務所規模別の採用分布割合 （2020年6月）
| 事務所規模 | 事務所数 | 72期採用人数 | ||
| 事務所数 | 構成比 | 人数 | 構成比 | |
| 50名以上 | 20 | 2.7% | 348 (77) | 27.7% |
| 10～49名 | 189 | 25.9% | 339 (77) | 26.9% |
| 3～9名 | 430 | 58.9% | 471 (103) | 37.4% |
| 2名以下 | 91 | 12.5% | 100 (17) | 7.9% |
| 総計 | 730 | 100.0% | 1258 (274) | 100.0% |
71期事務所規模別の採用分布割合 （2019年6月）
| 事務所規模 | 事務所数 | 71期採用人数 | ||
| 事務所数 | 構成比 | 人数 | 構成比 | |
| 50名以上 | 19 | 2.6% | 327 (72) | 26.0% |
| 10～49名 | 186 | 25.0% | 327 (61) | 26.0% |
| 3～9名 | 408 | 54.9% | 473 (94) | 37.6% |
| 2名以下 | 130 | 17.5% | 132 (17) | 10.5% |
| 総計 | 743 | 100.0% | 1,259 (244) | 100.0% |
（※ 即独推定者含む）
組織内弁護士採用は71期を下回る結果に
72期司法修習終了者の企業及びその他団体採用は65名で、昨年を下回りました。 72期司法修習終了者の組織内弁護士採用数は、ビジネス法務領域における弁護士ニーズの伸びが高い状況にも拘わらず、新人弁護士の供給がボトルネックになっていることを表しています。こうしたビジネス法務領域を中心とする組織内弁護士に対する需要に対し、法曹供給を抑制する法曹界は応えているとは言えません。
また、都道府県別で見てみると、組織内弁護士の約８割が東京で採用されており、次いで大阪や愛知、兵庫など、大企業の本社のある地域で採用されています。一方で、岡山など地方の中でも新人弁護士の採用に積極的な企業が存在しています。72期の組織内弁護士うち女性の占める割合は、71期の38.5%からさらに増加して43.1％であり、司法修習終了者全体に占める割合24.2％と比べ、組織内弁護士が女性法曹資格者の職域として人気の高いことがわかります。
72期採用企業・公的機関・その他団体一覧
| 法人名 | 都道府県 | 採用人数 |
| ヤフー株式会社 | 東京都 | 6 |
| 双日株式会社 | 東京都 | 5 |
| 株式会社Cygames | 東京都 | 2 |
| 株式会社三井住友銀行 | 東京都 | 2 |
| 三井住友信託銀行株式会社 | 東京都 | 2 |
| 住友化学株式会社 | 東京都 | 2 |
| 住友電気工業株式会社 | 大阪府 | 2 |
| （その他1名採用企業） | 44社 | 44 |
| 総計 | 65 |
72期企業・公的機関・その他団体の採用者の都道府県別割合
| 都道府県 | 採用人数 ( )内は女性の人数 |
72期の組織内弁護士 全体に対する割合 |
| 東京都 | 50 (22) | 76.9% |
| 大阪府 | 5 (3) | 7.7% |
| 愛知県 | 3 (1) | 4.6% |
| 兵庫県 | 3 (2) | 4.6% |
| 京都府 | 1 (0) | 1.5% |
| 岡山県 | 1 (0) | 1.5% |
| 三重県 | 1 (0) | 1.5% |
| 愛媛県 | 1 (0) | 1.5% |
| 総計 | 65 (28) | 100.0% |
72期企業・公的機関・その他団体の採用者の業種別割合
事務所に就職するも即独する人は一定割合存在
72期司法修習終了者のうち即独推定者は、１月時点の20名（1.3％）から32名（2.2％）に増加しました。例年は、時の経過とともに即独推定者は減る傾向にありますが、今回調査の増加は一旦法律事務所に就職したものの退職し、即独になったものと推定されます。
72期即独推定者
| 即独推定者 | 1月時点 ( )内は女性 |
6月時点 ( )内は女性 |
1月時点との差分 ( )内は女性 |
| 事務所名あり | 12（1） | 22（1） | +10（0） |
| 事務所名なし | 8（2） | 10（2） | +2（0） |
| 総計 | 20（3） | 32（3） | +12（0） |
（ジュリナビ運営事務局代表 鈴木修一）
■関連コンテンツ
72期司法修習終了者の就職状況調査 ～4月時点～
72期司法修習終了者の就職状況調査
71期司法修習終了者の就職状況 ～6月時点～
出典・免責事項・引用・転載等について
- 本調査は、官報、2020年各月時点の日本弁護士連合会等の公表データをもとに作成しています。
- 本調査はできるだけ正確性を保つよう合理的な努力をしましたが、所属弁護士数は日々変動し、かつ異動情報がタイムリーに日本弁護士連合会に提供されるとは限らないため、調査結果についてジュリナビとして完全性、正確性を保証するものではありません。
- 本調査に記載されたコメントはジュリナビ自身の見解であり、法科大学院協会や各法科大学院の見解とは一切関係はありません。
- 本調査に記載された調査、編集、分析された内容についてその一部又は全部につきジュリナビに無断で転載、掲載することを禁止させていただきます。
