72期司法修習終了者の就職状況調査

career-survey

~72期司法修習終了者数は1500名割れ!~

ジュリナビ運営事務局は、2020年1月末時点の72期司法修習終了者の就職状況を公開されている情報をもとに調査しました。司法試験合格者数が1,500名台となって以降、72期で初めて司法修習終了者数がとうとう1,500名を割り込み、1,487名になりました。70期、71期に続き、72期の司法修習終了者も減少し続けています。72期の司法修習生が就職活動をした時点では、コロナウィルス感染拡大もなく、わが国の雇用状況はタイトな状態が続き、法律業界も企業取引を中心に好調を続けて司法修習終了者の就職状況は売り手市場が続いていました。

特に、企業活動を支える法律業務は拡大し続けており、大都市圏の企業法務系の法律事務所、特に大規模事務所を中心とする人材需要も上昇傾向が続き、司法修習終了者数の減少にもかかわらず採用数を増やしました。ジュリナビが別報で公表する「2020年全国法律事務所所属弁護士数ランキング200」でも大規模事務所を中心に昨年比で弁護士数を増やしています。新人弁護士採用数の傾向に合致しているデータが表れています。

これとは逆に、地方経済の低調を表すように地方の法律事務所や個人経営小規模事務所の人材需要は減少し続けています。こうした傾向が経済状況の変化によるものなのか、或は、弁護士業界に構造的な変化が起こっているのか分析し、法的サービス需要者のニーズに合う質と量の法曹人材の供給の再配分が必要になると考えます。単純に司法試験合格者数をコントロールするのではなく適正な人材配置や求められる質の法曹の供給が市場原理により適正化されるべきでしょう。

I  72期司法修習生の就職状況

法曹三者への就職傾向
 72期司法修習終了者のうち、いわゆる法曹三者の職に就いたもの(組織内弁護士と即独を除く)は1,330名であり、全体の司法修習終了者の89%という高い比率を保っています。判事補採用数は75名と昨年より若干減少しました。検事採用数は63名と昨年並みになっています。判事補採用数と検事採用数の合計は全体の司法試験合格者数の中の割合は毎年10%内程度で推移してきています。

法曹三者以外、組織内弁護士採用数と弁護士未登録者数は共に減少
組織内弁護士は、司法修習終了者数が昨年より減ったことも影響し、46名と減少しました。企業就職や官公庁就職が多く含まれる法曹未登録者数は、91名となっており司法修習終了者の約6.1%に相当しています。72期の司法修習終了者の減少もあり昨年同時期比でも減少しています。

新法曹資格者の職種によるジェンダー格差
ジェンダー格差の観点からすると72期の24%が女性であり、71期と比べ増加しました。判事補採用者の女性割合は37.3%、検事採用の女性割合は43.1%であり、平均値を上回っており、組織内弁護士採用数に女性の占める割合は45.7%でこれらの職種ではいずれも司法修習終了者全体に占める女性割合24%と比べ高くなっています。一方、法律事務所就職の女性割合は全体の22.2%です。こうした傾向は続いており、女性法曹資格者の活躍する職域の拡大が次第に明らかになってきています。

司法修習に行かなかった者
72期の司法修習開始時に司法修習に行かなかった司法試験合格者は、43名と昨年比で増加しました。司法修習に行かなかった司法試験合格者の進路は、司法修習を終え弁護士登録をしなかった法曹資格者の進路と共に正確な公的調査が求められます。現実には、多くのものが官公庁、企業、研究職など職務の遂行に法曹資格を必ずしも必要としない職に進んでいると推定されます。

72期司法修習終了者就職状況

72期
(2020年1月調査)
71期
(2019年1月調査)
70期
(2018年1月調査)
司法試験合格者 1,525 1,543 1,583
司法修習終了者 1,487 1,517 1,563
司法修習辞退者 43(2.8%) 27(1.7%) 53(3.3%)
(※ 司法修習辞退者の%は司法試験合格者に対する割合)
司法修習終了者
(新規法曹資格者)
1,487(358) 1,517(319) 1,563(360)
判事補採用者 75(28)
(5.0%)
82(21)
(5.4%)
65(18)
(4.2%)
検事採用者 65(28)
(4.4%)
69(21)
(4.5%)
67(25)
(4.3%)
弁護士登録者 1,256(288)
(84.5%)
1,267(260)
(83.5%)
1,324(297)
(84.7%)
弁護士未登録者 91(14)
(6.1%)
99(17)
(6.5%)
107(20)
(6.8%)
弁護士登録者(内訳) 1,256(288) 1,267(260) 1,324(297)
 事務所所属
(組織内弁護士・即独推定者を除く)
1,190(264)
(80.0%)
1,199(235)
(79.0%)
1,240(276)
(79.3%)
 組織内弁護士
(企業・官公庁・その他団体)
46(21)
(3.1%)
52(23)
(3.4%)
64(19)
(4.1%)
 即独推定者 20(3)
(1.3%)
16(2)
(1.1%)
20(1)
(1.3%)

(※ ()内の数値は女性の人数、%は新規法曹資格者全体に対する割合)

Ⅱ 72期新人弁護士の事務所採用状況

~5大事務所採用の増加と東京集中の傾向~

以下が、72期採用数ランキングトップ10となります。5大事務所は、司法修習終了者数が1,500名以下に減少したにもかかわらず、総採用数を200名以上に増加させています。新法曹の供給を減らし続けているにもかかわらず5大事務所は採用を増やし続けていることに注目すべきです。5大事務所に続くのは、ベリーベスト、アディーレ、ALG&Associatesの新興系です。

72期採用数ランキングトップ10

順位 法人事務所
都道府県(※1) 所属人数(※2)
71期
採用人数
(※3)
71期採用人数
(※3)
1 西村あさひ法律事務所 東京都 598 53(8) 46(12)
2 森・濱田松本法律事務所 東京都 463 51(15) 34(3)
3 ベリーベスト法律事務所 東京都 234 42(10) 28(5)
4 長島・大野・常松法律事務所 東京都 484 38(6) 46(12)
5 アンダーソン・毛利・友常法律事務所 東京都 488 37(8) 36(11)
6 TMI総合法律事務所 東京都 457 35(9) 32(7)
7 弁護士法人アディーレ法律事務所 東京都 153 19(2) 10(0)
8 弁護士法人ALG&Associates東京オフィス 東京都 86 9(5) 22(3)
9 弁護士法人大江橋法律事務所 大阪府 148 7(0) 9(4)
9 弁護士法人琥珀法律事務所 東京都 27 7(1) 3(2)
9 弁護士法人御堂筋法律事務所 大阪府 133 7(3) 5(0)

(※1 主事務所所在地)
(※2 従事務所所属弁護士、外国法事務弁護士含む、提携事務所所属弁護士は含まない。)
(※3 ()内の数値は女性の人数、矢印は昨年比)

~5大事務所の新人採用数8年連続の増加~

5大事務所の、72期司法修習終了者の採用数はとうとう200名を超えました。これで8年連続の新人弁護士採用者数の増加となります。5大事務所以下の規模の事務所は弁護士数が100名台であり、5大事務所のリーガルマーケットの寡占状態になっています。 寡占化マーケットにおいて5大事務所の利益相反の可能性は益々高まっていますが、わが国の利益相反の基準は国際的にみてルーズと言わざるを得ません。これらの事務所のクライアントは法的な利益相反に限らずビジネスコンフリクトについても国際的な基準で考えていく必要があるのではないでしょうか。

今年度の法律事務所就職者総数は1,190名ですから、その18%弱が5大事務所への就職になります。また、その採用数は判検事任官合計140名を大きく上回っています。

72期5大事務所新人弁護士採用人数 期別推移グラフ

Ⅲ 弁護士会別採用数と事務所規模別の採用人数分布

~東京―大都市圏に求人が集中化~

東京、大阪、及び名古屋の3大都市圏で新規登録する司法修習終了者の割合は、全体の7割を超えるようになっており、更に、全体の約57%が東京三会で弁護士登録しています。この傾向は今後も進むものと思われます。わが国の社会経済の構造の変化は司法修習終了者の就職先地域にも明らかに表れています。多くの地方の法科大学院が閉校になる中、東京に法曹人材の偏在がさらに進むことが予想されます。

大都市圏(東京三会、大阪、愛知県)と東京三会の新人採用人数割合

72期弁護士会別採用人数

弁護士会 72期
採用人数
71期
採用人数
70期
採用人数
第一東京 257(56) (20.5%)↑ 219 (17.3%) 231 (17.4%)
第二東京 237(56) (18.9%)↑ 210 (16.6%) 224 (16.9%)
東京 224(63) (17.8%)↓ 287 (22.7%) 282 (21.3%)
大阪 130(28) (10.4%)↓ 139 (11.0%) 134 (10.1%)
愛知県 70(12) (5.6%)↑ 50 (3.9%) 67 (5.1%)
福岡県 47(11) (3.7%)↓ 48 (3.8%) 51 (3.9%)
神奈川県 45(9) (3.6%)↑ 43 (3.4%) 47 (3.5%)
埼玉 25(5) (2.0%)↑ 22 (1.7%) 33 (2.5%)
京都 23(5) (1.8%)↑ 21 (1.7%) 24 (1.8%)
千葉県 22(6) (1.8%)↓ 26 (2.1%) 27 (2.0%)
札幌 20(4) (1.6%)↓ 23 (1.8%) 27 (2.0%)
兵庫県 18(4) (1.4%)↓ 29 (2.3%) 23 (1.7%)
広島 16(6) (1.3%)↑ 9 (0.7%) 6 (0.5%)
岡山 13(7) (1.0%)↑ 12 (0.9%) 12 (0.9%)
静岡県 11(1) (0.9%)↑ 8 (0.6%) 13 (1.0%)
仙台 10(1) (0.8%)↓ 15 (1.2%) 11 (0.8%)
群馬 8(0) (0.6%)↑ 7 (0.6%) 13 (1.0%)
鹿児島県 7(1) (0.6%)↑ 6 (0.5%) 2 (0.2%)
沖縄 5(1) (0.4%)↓ 9 (0.7%) 4 (0.3%)
香川県 5(2) (0.4%)↑ 4 (0.3%) 4 (0.3%)
茨城県 5(0) (0.4%)↓ 8 (0.6%) 10 (0.8%)
三重 4(1) (0.3%)↑ 3 (0.2%) 5 (0.4%)
福島県 4(1) (0.3%)↓ 6 (0.5%) 4 (0.3%)
栃木県 4(0) (0.3%)↓ 7 (0.6%) 6 (0.5%)
大分県 4(0) (0.3%)↑ 0 (0.0%) 3 (0.2%)
山口県 3(1) (0.2%)↑ 1 (0.1%) 5 (0.4%)
岐阜県 3(0) (0.2%)↑ 1 (0.1%) 2 (0.2%)
長野県 3(2) (0.2%)↑ 3 (0.2%) 1 (0.1%)
青森県 3(1) (0.2%)↑ 1 (0.1%) 1 (0.1%)
熊本県 3(0) (0.2%)↓ 6 (0.5%) 6 (0.5%)
佐賀県 2(1) (0.2%)↑ 2 (0.2%) 1 (0.1%)
新潟県 2(0) (0.2%)↓ 5 (0.4%) 5 (0.4%)
金沢 2(0) (0.2%)↑ 2 (0.2%) 8 (0.6%)
宮崎県 2(0) (0.2%)↑ 0 (0.0%) 5 (0.4%)
滋賀 2(1) (0.2%)↑ 1 (0.1%) 5 (0.4%)
愛媛 2(0) (0.2%)↑ 2 (0.2%) 2 (0.2%)
旭川 2(1) (0.2%)↑ 0 (0.0%) 0 (0.0%)
和歌山 2(0) (0.2%)↓ 3 (0.2%) 2 (0.2%)
山形県 2(1) (0.2%)↑ 2 (0.2%) 1 (0.1%)
鳥取県 2(0) (0.2%)↑ 2 (0.2%) 2 (0.2%)
福井 1(0) (0.1%)↓ 5 (0.4%) 2 (0.2%)
富山県 1(0) (0.1%)↓ 3 (0.2%) 2 (0.2%)
岩手 1(0) (0.1%)↓ 2 (0.2%) 2 (0.2%)
徳島 1(0) (0.1%)↓ 2 (0.2%) 1 (0.1%)
函館 1(0) (0.1%)↑ 1 (0.1%) 0 (0.0%)
秋田 1(0) (0.1%)↑ 0 (0.0%) 0 (0.0%)
高知 1(0) (0.1%)↑ 0 (0.0%) 0 (0.0%)
奈良 0(0) (0.0%)↓ 4 (0.3%) 3 (0.2%)
山梨県 0(0) (0.0%)↓ 4 (0.3%) 1 (0.1%)
島根県 0(0) (0.0%)↓ 2 (0.2%) 0 (0.0%)
長崎県 0(0) (0.0%)↓ 2 (0.2%) 3 (0.2%)
釧路 0(0) (0.0%)→ 0 (0.0%) 1 (0.1%)
総計 1,256(288) (100.0%) 1,267 (100.0%) 1,324 (100.0%)

(※ ()内の数値は女性の人数、%は全体に対する割合、矢印は割合の昨対比)

~大規模事務所と小規模事務所の格差広がる~

法律事務所規模10名超の事務所の司法修習終了者の採用数が増加しており、70期以降全体の半数を超えるようになりました。特に、事務所規模が弁護士50名を超える法律事務所の採用数は急速に増加しています。一方、これまで司法修習終了者の採用の大半を占めていた小規模事務所の採用数は、毎年減少し続けています。

この事務所規模による司法修習終了者の採用数変化は、わが国の法律事務所の業務内容の変化の反映とも言えます。日本の法律業界の変化の速度は極めてゆっくりしていますが、法律事務所の組織は、個人顧客相手の小規模事務所中心から組織化された大規模事務所へと確実に変化し始めており、一方、地域的には、企業法務の需要(東京が中心となる)の増加に応じて、弁護士の地方から東京への集中が着実に進んでいます。

72期事務所採用人数別の分布割合

事務所人数 事務所数 72期採用数
事務所数 構成比 人数
構成比
50名以上 22 3.2% 349(77) 28.8%
10~49名 200 29.1% 347(81) 28.7%
3~9名 401 58.3% 438(94) 36.2%
2名以下 65 9.4% 76(15) 6.3%
総計 688 100.0% 1210(267) 100.0%

71期事務所採用人数別の分布割合

事務所人数 事務所数 71期採用数
事務所数 構成比 人数 構成比
50名以上 19 2.7% 320(70) 26.3%
10~49名 191 27.4% 346(67) 28.5%
3~9名 384 55.0% 443(87) 36.5%
2名以下 104 14.9% 106(13) 8.7%
総計 698 100.0% 1,215(237) 100.0%

70期事務所採用人数別の分布割合

事務所人数 事務所数 70期採用数
事務所数 構成比 人数 構成比
50名以上 19 2.5% 286 (59) 22.9%
10~49名 186 24.6% 353 (81) 28.3%
3~9名 455 60.2% 514 (115) 41.2%
2名以下 96 12.7% 96 (21) 7.7%
総計 756 100.0% 1,249 (276) 100.0%

(※ 即独推定者含む、採用人数の()内の数値は女性の人数)

10人以上事務所における新人採用人数の期別推移

事務所規模別 新人採用人数の全体に占める割合

Ⅳ 企業及びその他法人の採用一覧・採用人数

~組織内弁護士の72期採用は苦戦~

72期司法修習終了者の企業及びその他団体採用は46名で、3年連続で減少しました。4月以降の調査によりより正確な動きが判明するでしょう。
しかし、法曹三者採用で司法修習終了者の9割というわが国の法曹人材の偏りがある中、企業にとり、司法修習終了者数が1,500名を切ったことで、法律事務所と競合しながら新人弁護士を採用するのはますます難しくなっていると言えます。特に、一企業の複数名の採用は難しくなっており、採用できても1名という企業が大多数になっています。
一方、採用者の中で女性割合が増加しています。組織内弁護士就職の46名のうち女性は21名で、全体の45.7%になっており組織内弁護士採用に関する限りジェンダー格差はなくなっています。司法修習終了者数が減少し続け、新人弁護士採用が難しくなり、一方で司法試験合格率の維持により未合格者修了生の数も減少することが見込まれます。企業法務関係者は継続的にどのように優秀な法務人材を確保していくのか真剣に対応する必要に迫られるでしょう。

72期採用企業・公的機関・その他団体一覧

法人名 都道府県 採用人数
ヤフー株式会社 東京都 6
双日株式会社 東京都 5
住友化学株式会社 東京都 2
住友電気工業株式会社 大阪府 2
株式会社三井住友銀行 東京都 2
株式会社Cygames 東京都 2
各1名採用企業・団体 27
総計 46

72期業種別新人弁護士採用人数

業種 採用人数 女性の割合
金融 3(0) 0.0%
メーカー 15(7) 46.7%
IT 8(3) 37.5%
サービス 7(5) 71.4%
その他 10(4) 40.0%
公的機関・その他団体 3(2) 66.7%
総計 46(21) 45.7%

(※ ()内の数値は女性の人数)

72期採用者の業種別割合

Ⅴ 即独推定者

72期司法修習終了者のうち即独推定者は20名(1.3%)でした。司法試験合格者数を減少させても必ず一定数は即独は生まれるもののようです。

72期即独推定者

即独推定者 人数
事務所名あり 12(1)
事務所名なし 8(2)
総計 20(3)

(※ ()内の数値は女性の人数)

(ジュリナビ運営事務局代表 鈴木修一)

出典・免責事項・引用・転載等について
  1. 本調査は、最高裁判所広報課へのヒアリングや2020年1月時点の官報や日本弁護士連合会等の公表データをもとに作成しています。また、70~71期生の採用数については、過去の「ジュリナビ」運営事務局調べ「司法修習生進路調査速報」 より引用しています。
  2. 本調査はできるだけ正確性を保つよう合理的な努力をしましたが、所属弁護士数は日々変動し、かつ異動情報がタイムリーに日本弁護士連合会に提供されるとは限らないため、調査結果についてジュリナビとして完全性、正確性を保証するものではありません。
  3. 本調査に記載されたコメントはジュリナビ自身の見解であり、法科大学院協会や各法科大学院の見解とは一切関係はありません。
  4. 本調査に記載された調査、編集、分析された内容についてその一部又は全部につきジュリナビに無断で転載、掲載することを禁止させていただきます。
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