74期司法修習終了者の就職状況調査

career-survey

~74期司法修習終了者数は3期連続1500名割れ!~

ジュリナビ運営事務局は、2022年5月末時点の74期司法修習終了者の就職状況を公開情報に基づき調査しました。74期の司法修習終了者数は1,456名と司法試験合格者を上回りましたが、72期から3期連続で1,500名を下回りました。コロナパンデミックにより74期の司法修習は例年と時期がずれ、就職の時期もイレギュラーだったにもかかわらず順調に就職ができた模様です。
コロナパンデミックにかかわらず企業活動を支える法律業務は拡大し続けており、大都市圏の企業法務系の法律事務所、特に、東京の大規模事務所を中心とする人材需要は強含みが続いています。ジュリナビが別報で公表している「2022年全国法律事務所ランキング200」でも上位大規模事務所が昨年比で弁護士数を増やしています。

また、コロナパンデミックからの回復の影響か、地方経済の衰弱化を表していたとみられる地方の法律事務所の新人弁護士需要は引き続き低迷しているように見られます。8地方単位会で新規弁護士登録がゼロになっており、昨年の9地方単位会と同程度です。

これとは逆に、個人経営小規模事務所の新人弁護士需要は減少し続けています。

数年続いている法曹人材供給の絞り込みが、地域別及び業界別の法的サービスニーズに悪影響を与えていないか、法曹人材の供給の検討が必要になると考えます。

I  74期司法修習生の就職状況

法曹三者への就職傾向
74期司法修習終了者のうち、いわゆる法曹三者の職に就いたもの(組織内弁護士と即独を除く)は1,312名であり、全体の司法修習終了者の90%という高い比率を保っています。判事補採用数は73名と昨年まで3年連続で減少していましたが、増加に転じました。検事採用数も72名と増加しています。それぞれ女性の占める割合は4割弱となり、ジェンダー格差緩和の取り組み姿勢が見られます。

法曹三者以外、組織内弁護士採用数と弁護士未登録者数
組織内弁護士は、48名と微減しました。司法修習終了者が減少を続けている中、法曹未登録者数は、85名となっており、司法修習終了者の約5.8%に相当しています。ここ数年弁護士未登録者数は全体の約6%程度で推移しています。

新法曹資格者の職種によるジェンダー格差
74期司法修習終了者の25.9%が女性であり、73期と比べ増加しました。判事補採用者の女性割合は 37.0%、検事採用の女性割合は38.9%であり、平均値を上回っています。また、組織内弁護士採用数に女性の占める割合は、37.5%でこれらの職種では女性人材が積極的に活用されています。
一方、法律事務所就職の女性割合は全体の24.1%です。昨年よりも微増したとはいえ法律業界のジェンダー格差は法曹養成システム自体の女性志願者増加策を積極的に講じない限り解消は困難でしょう。

司法修習に行かなかった者
74期の司法修習開始時に司法修習に行かなかった司法試験合格者は、-6名となりました。コロナパンデミックが影響したのか、前年までに司法修習に行かなかった司法試験合格者が今回修習に参加したとみられます。司法修習を終え弁護士登録をしなかった法曹資格者の進路と共に正確な公的調査が求められます。現実には、多くのものが官公庁、企業、研究職など職務の遂行に法曹資格を必ずしも必要としない職に進んでいると推定されます。

74期司法修習終了者就職状況

74期
(2022年5月調査)
73期
(2021年1月調査)
72期
(2020年1月調査)
司法試験合格者 1,450 1,502 1,525
司法修習終了者 1,456 1,464 1,487
司法修習辞退者 -6(-0.4%) 29(1.9%) 43(2.8%)
(※ 司法修習辞退者の%は司法試験合格者に対する割合)
司法修習終了者
(新規法曹資格者)
1,456(377) 1,464(366) 1,487(358)
判事補採用者 73(27)
(5.0%)
66(24)
(4.5%)
75(28)
(5.0%)
検事採用者 72(28)
(5.0%)
66(22)
(4.5%)
65(28)
(4.4%)
弁護士登録者 1,226(301)
(84.2%)
1,244(298)
(85.0%)
1,256(288)
(84.5%)
弁護士未登録者 85(21)
(5.8%)
88(22)
(6.0%)
91(14)
(6.1%)
弁護士登録者(内訳) 1,226(301) 1,244(298) 1,256(288)
 事務所所属
(組織内弁護士・即独推定者を除く)
1,167(282)
(80.2%)
1,173(274)
(80.1%)
1,190(264)
(80.0%)
 組織内弁護士
(企業・官公庁・その他団体)
48(18)
(3.3%)
51(21)
(3.5%)
46(21)
(3.1%)
 即独推定者 11(1)
(0.8%)
20(3)
(1.4%)
20(3)
(1.3%)
(※ ()内の数値は女性の人数、%は新規法曹資格者全体に対する割合)
Ⅱ 74期新人弁護士の事務所採用状況

~5大事務所採用の増加と東京集中の傾向~

以下が、74期弁護士採用数の法律事務所ランキングトップ10となります。5大事務所は、司法修習終了者数が1,500名以下に減少したにもかかわらず、今年も採用数を合計で200名以上と昨年並みの採用数になっています。74期弁護士採用で最も採用数が多かったのは、ベリーベスト法律事務所で、昨年に引き続き5大事務所を超えた採用数となりました。このことにより、ベリーベスト法律事務所がコロナパンデミックの中、順調に業務を拡大していることが明らかになっています。

74期採用数ランキングトップ10

順位 法人事務所
都道府県(※1) 所属人数(※2)
74期
採用人数
(※3)
73期採用人数
(※3)
1 ベリーベスト法律事務所 東京都 345 74(13) 62(8)
2 西村あさひ法律事務所 東京都 646 45(14) 49(14)
3 アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 東京都 537 44(14) 38(16)
4 長島・大野・常松法律事務所 東京都 524 43(10) 48(12)
5 森・濱田松本法律事務所 東京都 528 41(9) 35(9)
6 TMI総合法律事務所 東京都 557 38(8) 42(11)
7 アディーレ法律事務所 東京都 222 28(4) 20(1)
8 岡野法律事務所 広島県 57 14(4) 5(1)
9 弁護士法人ALG&Associates本部 東京都 85 13(5) 10(0)
10 弁護士法人東京スタートアップ法律事務所 東京都 27 10(4) 2(2)
(※1 主事務所所在地)
(※2 従事務所所属弁護士、外国法事務弁護士含む、提携事務所所属弁護士は含まない。)
(※3 ()内の数値は女性の人数、矢印は昨年比)

~5大事務所の新人採用数は法律事務所就職者の18%~

5大事務所の、73期弁護士の採用数は昨年に引き続き200名を超える規模になりました。74期弁護士の法律事務所就職者総数は1,167名ですから、その18.1%が5大事務所に就職したことになります。

74期5大事務所新人弁護士採用人数 期別推移グラフ

Ⅲ 弁護士会別採用数と事務所規模別の採用人数分布

~東京―大都市圏に求人が集中化~

東京、大阪、及び名古屋の3大都市圏で新規登録する74期弁護士の割合は、全体の75%程度であり、更に、全体の60.5%が東京三会で弁護士登録しています。この司法修習終了者の就職傾向は今後も引き続き継続すると思われます。わが国の社会経済の構造の変化は司法修習終了者の就職先地域にも明らかに表れています。

大都市圏(東京三会、大阪、愛知県)と東京三会の新人採用人数割合

74期弁護士会別採用人数

弁護士会 74期
採用人数
73期
採用人数
72期
採用人数
第一東京 293(77)(23.9%)↑ 286(23.0%) 257(20.5%)
第二東京 240(60)(19.6%)↓ 257(20.7%) 237(18.9%)
東京 209(54)(17.0%)↓ 223(17.9%) 224(17.8%)
大阪 117(29)(9.5%)↓ 130(10.5%) 130(10.4%)
愛知県 50(12)(4.1%)↓ 51(4.1%) 70(5.6%)
神奈川県 40(11)(3.3%)↑ 35(2.8%) 45(3.6%)
福岡県 33(3)(2.7%)↓ 34(2.7%) 47(3.7%)
埼玉 27(7)(2.2%)↑ 22(1.8%) 25(2.0%)
千葉県 25(9)(2.0%)↑ 21(1.7%) 22(1.8%)
京都 21(7)(1.7%)↑ 15(1.2%) 23(1.8%)
札幌 20(5)(1.6%)↓ 24(1.9%) 20(1.6%)
広島 18(3)(1.5%)↑ 14(1.1%) 16(1.3%)
兵庫県 16(6)(1.3%)↓ 27(2.2%) 18(1.4%)
仙台 12(3)(1.0%)↑ 12(1.0%) 10(0.8%)
群馬 9(2)(0.7%)↑ 7(0.6%) 8(0.6%)
岡山 9(0)(0.7%)↑ 6(0.5%) 13(1.0%)
静岡県 8(0)(0.7%)↓ 12(1.0%) 11(0.9%)
栃木県 8(1)(0.7%)↑ 5(0.4%) 4(0.3%)
沖縄 7(2)(0.6%)↑ 4(0.3%) 5(0.4%)
鹿児島県 6(1)(0.5%)↑ 2(0.2%) 7(0.6%)
福島県 4(1)(0.3%)↑ 3(0.2%) 4(0.3%)
富山県 4(0)(0.3%)↑ 1(0.1%) 1(0.1%)
奈良 4(2)(0.3%)↑ 3(0.2%) 0(0.0%)
和歌山 3(1)(0.2%)↑ 0(0.0%) 2(0.2%)
金沢 3(0)(0.2%)↓ 6(0.5%) 2(0.2%)
長崎県 3(1)(0.2%)↑ 2(0.2%) 0(0.0%)
愛媛 3(1)(0.2%)↑ 1(0.1%) 2(0.2%)
熊本県 3(0)(0.2%)↑ 2(0.2%) 3(0.2%)
茨城県 3(0)(0.2%)↓ 7(0.6%) 5(0.4%)
香川県 3(1)(0.2%)↑ 3(0.2%) 5(0.4%)
長野県 3(0)(0.2%)↓ 6(0.5%) 3(0.2%)
大分県 2(0)(0.2%)↑ 1(0.1%) 4(0.3%)
秋田 2(0)(0.2%)↑ 0(0.0%) 1(0.1%)
山形県 2(1)(0.2%)↑ 2(0.2%) 2(0.2%)
山口県 2(0)(0.2%)↓ 5(0.4%) 3(0.2%)
徳島 2(0)(0.2%)↑ 0(0.0%) 1(0.1%)
佐賀県 2(0)(0.2%)↑ 1(0.1%) 2(0.2%)
宮崎県 2(0)(0.2%)↑ 2(0.2%) 2(0.2%)
青森県 2(0)(0.2%)↑ 1(0.1%) 3(0.2%)
新潟県 2(0)(0.2%)↑ 2(0.2%) 2(0.2%)
三重 1(0)(0.1%)↓ 2(0.2%) 4(0.3%)
岐阜県 1(1)(0.1%)↓ 2(0.2%) 3(0.2%)
滋賀 1(0)(0.1%)↑ 1(0.1%) 2(0.2%)
島根県 1(0)(0.1%)↑ 1(0.1%) 0(0.0%)
福井 0(0)(0.0%)↓ 1(0.1%) 1(0.1%)
鳥取県 0(0)(0.0%)→ 0(0.0%) 2(0.2%)
函館 0(0)(0.0%)→ 0(0.0%) 1(0.1%)
岩手 0(0)(0.0%)→ 0(0.0%) 1(0.1%)
旭川 0(0)(0.0%)→ 0(0.0%) 2(0.2%)
高知 0(0)(0.0%)→ 0(0.0%) 1(0.1%)
山梨県 0(0)(0.0%)↓ 2(0.2%) 0(0.0%)
釧路 0(0)(0.0%)→ 0(0.0%) 0(0.0%)
総計 1,226(301)(100.0%) 1,244(100.0%) 1,256(100.0%)

(※ ()内の数値は女性の人数、%は全体に対する割合、矢印は割合の昨対比)

~大規模事務所と小規模事務所の格差広がる~

法律事務所規模10名超の事務所の司法修習終了者の採用数が毎年増加しており、74期弁護士では65.0%になりました。5大事務所の採用数が司法修習終了者の法律事務所就職に大きな割合を占めると前述しましたが、事務所規模が弁護士50名を超える法律事務所の司法修習終了者の採用数が急速に増加しています。一方、これまで司法修習終了者の採用の大半を占めていた10名以下の小規模事務所の採用数は、採用余力が枯渇しつつあるためか毎年減少し続けています。

この事務所規模による司法修習終了者の採用数変化は、わが国の法律事務所の業務内容の変化の反映をしています。日本の法律業界の変化の速度は極めてゆっくりしていますが、法律事務所の組織は、個人顧客相手の小規模事務所から企業を顧客とする組織化された大規模事務所へと確実に変化し始めています。同時に、こうした企業顧客が集中する東京や大都市への弁護士の集中を加速化しています。

74期事務所採用人数別の分布割合

事務所人数 事務所数 74期採用数
事務所数 構成比 人数 構成比
50名以上 27 4.5% 430 36.6%
10~49名 196 32.6% 334 28.4%
3~9名 319 53.0% 351 29.9%
2名以下 60 10.0% 60 5.1%
総計 602 100.0% 1,175 100.0%

73期事務所採用人数別の分布割合

事務所人数 事務所数 73期採用数
事務所数 構成比 人数 構成比
50名以上 21 3.3% 379(88) 32.0%
10~49名 208 32.9% 365(92) 30.8%
3~9名 332 52.5% 367(79) 31.0%
2名以下 71 11.2% 73(16) 6.2%
総計 632 100.0% 1,184(275) 100.0%

72期事務所採用人数別の分布割合

事務所人数 事務所数 72期採用数
事務所数 構成比 人数
構成比
50名以上 22 3.2% 349(77) 28.8%
10~49名 200 29.1% 347(81) 28.7%
3~9名 401 58.3% 438(94) 36.2%
2名以下 65 9.4% 76(15) 6.3%
総計 688 100.0% 1210(267) 100.0%

(※ 即独推定者含む、採用人数の()内の数値は女性の人数)

10人以上事務所における新人採用人数の期別推移

事務所規模別 新人採用人数の全体に占める割合

Ⅳ 企業及びその他法人の採用一覧・採用人数

~組織内弁護士の74期採用は苦戦~

74期弁護士の企業及びその他団体採用は48名と昨年比微減でした。
法曹三者採用で司法修習終了者の9割を占めるというわが国の法曹人材の偏りがある中、企業にとり、司法修習終了者数が1,500名以下となる事態が続くことにより、法務部員として弁護士を採用するのはますます難しくなっていると言えます。これまでの法曹供給が豊富であった時代の弁護士の年齢が上がってくれば、企業法務部の多くが求めている実務経験3~5年の弁護士の中途採用は困難になり、ひいては採用コストアップにつながってくると思われます。企業法務関係者は、法務部門の維持・強化のためどのように優秀な法務人材を継続的に確保していくのか真剣に対応する必要があります。
一方、企業採用司法修習終了者の女性割合は他の職種より多く、48名のうち女性は18名で、全体の37.5%になっています。新卒組織内弁護士採用に関する限りジェンダー格差は解消されています。

74期採用企業・公的機関・その他団体一覧

法人名 都道府県 採用人数
ヤフー株式会社 東京都 3
丸紅株式会社 東京都 2
ソフトバンクグループ株式会社 東京都 2
住友生命保険相互会社 東京都 2
各1名採用企業・団体 39
総計 48

74期業種別新人弁護士採用人数

業種 採用人数 女性の割合
金融 13(5) 38.5%
メーカー 12(6) 50.0%
IT 6(2) 33.3%
サービス 5(1) 20.0%
その他 6(4) 66.7%
公的機関・その他団体 6(0) 0.0%
総計 48(18) 37.5%

(※ ()内の数値は女性の人数)

74期採用者の業種別割合

Ⅴ 即独推定者

74期司法修習終了者のうち即独推定者は11名(0.8%)でした。司法試験合格者数を減少させても必ず一定数は即独は生まれるもののようです。

72期即独推定者

即独推定者 人数
事務所名あり 8(1)
事務所名なし 3(0)
総計 11(1)

(※ ()内の数値は女性の人数)

(ジュリナビ運営事務局代表 鈴木修一)

出典・免責事項・引用・転載等について
  1. 本調査は、最高裁判所広報課へのヒアリングや2021年1月時点の官報や日本弁護士連合会等の公表データをもとに作成しています。また、71~72期生の採用数については、過去の「ジュリナビ」運営事務局調べ「司法修習生進路調査速報」 より引用しています。
  2. 本調査はできるだけ正確性を保つよう合理的な努力をしましたが、所属弁護士数は日々変動し、かつ異動情報がタイムリーに日本弁護士連合会に提供されるとは限らないため、調査結果についてジュリナビとして完全性、正確性を保証するものではありません。
  3. 本調査に記載されたコメントはジュリナビ自身の見解であり、法科大学院協会や各法科大学院の見解とは一切関係はありません。
  4. 本調査に記載された調査、編集、分析された内容についてその一部又は全部につきジュリナビに無断で転載、掲載することを禁止させていただきます。
  5. 事前承諾は、鈴木修一(お問い合わせ)まで連絡ください。
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