米国ロースクール留学について -2-

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米国ロースクールでどういうコースを選択すべきか?

LL.M.コースについて

最近では、前述のJ.D.コースに進む日本人も少なからずいますが、アメリカ人の学生と同等な語学力が要求されますので、現実的には帰国子女や高校までに留学経験がありネイティヴレベルの英語力のある人たちに限られるでしょう。従い、日本人留学生の多くはロースクール併設のLL.M.(またはM.C.L.と呼ぶところもある)という、日本でいう修士課程に進んでいます。

LL.M.は、本来は専門分野をJ.D.卒業生が学ぶところですが、諸外国からの留学生(学者、裁判官、検察官や実務家法曹)の多くの受け入れ先にもなっています。

ちなみに、これまで米国のロースクール生にとりLL.M.は、就職の際ほとんどプラス要因にはならないので、ロースクール卒業後税法など特別の課題を研究するための限られた範囲の人たちしか来ませんでした。

ただ、昨今、米国の弁護士就職事情は厳しくなってきており、各ロースクールが海外留学生向けでない特色のあるLL.M.プログラムを提供し始めていますので、これらと間違わないようにしなければなりません。現実には、日本からの留学生の受け入れに積極的なロースクールは全米で約20校程度です。

LL.M.では日本ですでに受けた法学教育がカウントされ1年(事実上は9月から始まるfall semesterと1月から始まるspring semesterの約9か月)で学位が取得できます。但し、あくまで1年間という短い期間で米国法を学ぶのですから限界はあります。

しかし、LL.M.を取得することで判例法の考え方、基本法、米国のリーガルシステムの全般を理解することができるでしょう。また、ロースクール留学中には、現地のロースクール生や教授達と知り合え、また、海外からの様々なバックグランドを持った留学生とのコミュニケーションもできる機会も豊富です。

法科大学院在学中でもLL.M.プログラムに行くことは、たいていの場合には可能です。しかし、法律事務所や企業などで実務経験をある程度積んで(3~5年くらい)から留学すれば、より明確な目的意識をもってアメリカ法を学ぶことができ、その経験は必ずキャリア形成に役立ちますし、更に、受け入れ側のロースクールも入学判定で実務経験を積極的に評価してくれます。

更に、LL.M.取得のメリットは、ニューヨーク州とカリフォルニア州では外国資格で州の法曹資格を取得できる可能性があることです。LL.M.取得した直後の夏に受験すれば、ちょうど丸一年で州の弁護士資格を取得できることになります。米国では弁護士資格は州ごとに与えられるのでそれぞれの州で資格要件が異なりますが、少なくとも現在のところこの2州が外国法曹資格者の受験者に寛容なところです。

では、日本人が係わる実務でニューヨーク州資格かカリフォルニア州資格かどちらの汎用性が高いかということになると、国際取引で優位な前者ということになります。勿論、カリフォルニア州をベースに仕事をするのであれば当然カリフォルニア州資格を取得しなければなりません。

但し、いずれにせよ必要単位や条件に注意しないと受験資格が認められませんのでロースクールLL.M.コースの選択の際に必要単位や条件を満たすのか当該州の規則の確認が必要です。以下の本稿5において、ニューヨーク州の司法試験(Bar Examination)について説明しますので参考にしてください。

なお、米国のいくつかのロースクールでは、夏季に2週間程度で履修する米国法入門のサマープログラムを開いていますが、LL.M.とは別物です。LL.M.に入学する前に準備のためにこうしたコースをとる日本人学生もいますが、学費もかかり、LL.M.のロースクールと離れていれば移動や滞在費用もかかります。

いずれにしてもロースクールで一挙にこうしたサマープログラムの内容は学ぶことになりますし、経歴の点からもあまりプラスにはならないでしょう。

どのロースクールを選択すべきか?

一時期日本ブームであったころ有力な米国ロースクールでは日本法プログラムができ積極的に日本の弁護士事務所、企業や官庁からの留学生を受け入れて来ました。
しかし、最近の米国のロースクールでは、中国、インドや南米などからの留学生が目立ち、日本人留学生の影が薄くなりつつあります。しかし、歴史的に日本人留学生受け入れ実績あるロースクールのLL.M.コースは、日本人留学生を現在でも多数受け入れています。

勿論、そのほかのロースクールのLL.M.でも受け入れてくれるとは思いますが、受け入れ実績のあるロースクールの方が日本人の受け入れに慣れていてサポートもあり勉学がし易いと思います。

米国では全米法曹協会(American Bar Association、”ABA”)の認証を受けたロースクールは205校ありますが、その質についてABAはランク付けしていません。但し、現実には社会的評価において大きく4つのランク分けがされており、その教育の質には大きな隔たりがあり、また、卒業後の就職(初任給レベル)にも大きな差があります。
2017年度のU.S. NewsロースクールによるTop 10ランキングは以下の通りです。

  1. Yale University, New Heaven, CT
  2. Stanford University, Stanford, CA
  3. Harvard University, Cambridge, MA
  4. University of Chicago, Chicago, IL
  5. Columbia University, New York, NY
  6. New York University, New York, NY
  7. University of Pennsylvania, Philadelphia, PA
  8. University of Michigan-Ann Arbor, Ann Arbor, MI
  9. University of Virginia, Charlottes, VA
  10. Duke University, Durham, NC
    Northwestern University (Pritzker), Chicago, IL

その他の全米ロースクールの詳細なランキングについては、以下のU.S. Newsが毎年出しているランキングを参照してください。

U.S. News ”Best Law Schools Ranked in 2017″

U.S. Newsのロースクール評価については疑問視する意見もありますが、概ね、米国内の一般の評価に近いでしょう。

また、このランキング以外に、一般的に”T-14”と呼ばれる全米上位 14校のロースクールがありますが、U.S. News毎年発表のランキングとは必ずしも一致していません。”T-14”には上記のロースクールの他に、University of California-Berkeley、Cornel University、University of Texasが挙げられます。また、Georgetown Universityを”T-14”に含めることもあります。

もちろんこれらのロースクールの評価は、J.D.コースのものであり、LL.M. コースの評価とは必ずしも一致しません。ただ、一般に全米で評価の高いロースクールは、教授陣の人材や施設が整っているところが多く、また、卒業生の人的ネットワークにも優れたところがあり、これらの評価はLL.M.選択に依然参考になります。

また、将来の就職や転職の際、LL.M.であってもいわゆる有名ロースクール卒業の方が有利に働くことは多いにありえます(LL.M. がJ.D.コースに入学するより容易なことは、米国でも一般の人は知りませんし、ロースクールの名前で判断します)。

なお、米国は広大な国なので東海岸、西海岸、中西部などの地域で環境や文化が大きく異なり、また、ロースクールの雰囲気も随分違ってきますので、自分の専門性、嗜好や性格もロースクール選択においてよく考えるべきです。

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  1. 本記事は、2017年4月1日時点の情報をもとに作成しています。
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