米国ロースクールへのLL.M.入学手続き:願書の準備・提出
LL.M.への入学手続きは、それぞれのロースクールで異なりますが、法科大学院や大学の成績(できるだけGPAの高いことが望ましい)、TOEFL(できるだけ得点が高いことが望ましいし、高い語学力は、入学後の勉強に役立ちます)、推薦状(できるだけ米国で名前の知れている組織や機関に属する人からが望ましい)、履歴書(職歴や社会活動など印象的な内容が望ましい)などが通常要求されます。
しかし各ロースクールがどういう基準で選抜するかは各校の個別判断であり明確な基準ははっきりしません。
米国では結構コネがききますので、出身母体の組織や卒業生が当該ロースクールに寄付金を出しているなどの関係があるとか、選考責任者の知り合いであるとかの人的関係とかがものを言うことがあります。ただし、こういうコネがみつからなくても米国では実力さえあれば評価しますので、それほど悲観する必要はなく、積極的にいくつかのロースクールに願書を出すべきです。前述の全米ランキング順に入学難易度が決まるわけでもありません。
しかし、出願書類の内容については、十分吟味することが大切です。日本からの留学希望者は、有名大学、法科大学院、有名事務所や企業などで、おおむね似たような経歴で、推薦状も似たりよったりであり、差別化が難しいものです。よく志望ロースクールの内容をウェブサイトで調べ、当該ロースクール側から見て望ましい志願者とみられるような内容にするよう工夫することが大切です。
ロースクールの学期は9月の秋学期から春5月の秋学期終了までですが、願書は前年の秋早々から志望のロースクールに提出しなければなりません。いわゆる人気校には日本からの志願者に加え世界各国からの志願者が殺到しますので、そのロースクールの選抜基準に合う志願者から順に合格通知が出ます。その時点で合格判定がでないとwaiting listにのり合格を待たなければならないので複数願書を出して合格を確実なものにする必要があります。
ゆっくりしていると合格枠が埋まってしまいますので、早め早めの動きが必要で、TOEFL受験や推薦状の手配など予定の1年以上前から動いて準備しなければなりません。しっかり準備さえしていれば、複数願書を出したロースクールでどこかは受け入れてくれるはずです。米国ではこういった前向きの姿勢が大切でしょう。
米国ロースクール留学にどの位費用がかかるのか?
LL.M.を取得し、ニューヨーク州かカリフォルニア州で弁護士資格を取得するまでには相当なコストがかかります。 概ね、ロースクールLL.M.の学費は約5~6万ドル(JDの3年コースに行く場合の1年間の授業料と大差ない)であり、生活費が約2~3万ドルを見込む必要があります。更に、留学生にはLL.M.にかかる費用に加え、往復旅費、引っ越し、州司法試験の受験費用などその他諸費用(2万ドル近く)がかかることになります。家族帯同であれば、さらに費用が膨らみます。
ロースクール名 | (Tuition)学費 | 総額 | 内訳 |
イエール大学ロースクール | $59.920 | $82.534 | Tuition, University Administrative & Activities Fee, Room, Board, Personal Expenses, Books, University Hospitalization Coverage |
ハーバード大学ロースクール | $61.650 | $92.450 | Tuition, Health Insurance and Health Services Fees, Activities Fee, Living Allowance, Dental Insurance, Other (books, travel, and incidentals) |
スタンフォード大学ロースクール | $58.041 | $92.622 | Tuition, Cost of Living |
コロンビア大学ロースクール | $63.048 | $94.540 | Tuition, Student Activity Fee, University Facilities Fee, Health Services Fee, Student Health Insurance-Gold Level, Document Fee, Books, Supplies, Room, Board, Personal |
シカゴ大学ロースクール | $59.541 | $89.700 | Tuition, Medical Insurance, Student Life Fee, Room, Board, Transcript fee, Books, Personal Expenses/Misc, Transportation Expenses, Computer Allowance |
ニューヨーク大学ロースクール | $59.558 | $89.342 | Tuition, Health, Registration, Service, Tech Fees, Room, Board, Books and Supplies, Health Insurance-Basic Plan, Loan Fees |
ペンシルバニア大学ロースクール | $59.382 | $92.444 | Tuition, University & Law School Fees, LLM Summer Program, Academic Subtotal, Room, Board, Books, Personal expenses, Clinical fee, Health insurance, Support Subtotal |
カリフォルニア大学バークレー校ロースクール | $59.646 | $90.146 | Tuition and Fees, Living Expenses, Books & Supplies, Health Insurance Fees |
ヴァージニア大学ロースクール | $59.300 | $81.432 | Tuition, Living Expenses, Health Insurance (amount expected to change), Books and Supplies |
ミシガン大学ロースクール | $58.104 | $77.114 | Tuition, Rent/Utilities/Food, Books and Supplies, Personal Expenses, Loan Origination Fees |
デューク大学ロースクール | $58.700 | $83.751 | Tuition, Medical Insurance, Health Fee, Law Student Activity Fee, Graduate Student Activity Fee, Graduate Student Services Fee, Recreation Fee, Transcript Fee, Loan Fees, Rent & Utilities, Food, Books & Supplies, Personal/Miscellaneous |
ノースウェスタン大学ロースクール | $59.550 | $78.297 | ー |
コーネル大学ロースクール | $65.456 | $91.207 | Tuition, Student Activity Fee, Room, Board, Books and Supplies, Personal/Travel, Health Insurance, Loan Fee |
ジョージタウン大学ローセンター | $57.576 | ー | ー |
南カリフォルニア大学ロースクール | $61.898 | $85.852 | Tuition, Mandatory Fees, Books/Supplies, Housing Allowance, Board, Personal/Misc, Transportation |
カリフォルニア大学ロサンゼルス校ロースクール | $54.932 | $58.813 | Tuition, Health Insurance, Mandatory Health Facilities Fees |
ワシントン大学ロースクール(シアトル) | $38.019 | $58.965 | Non-Resident Tuition and other campus fees, Health Insurance (required), Room, Board, Books and Supplies, Local Transportation, Personal Expenses |
ボストン大学ロースクール | $50.000 | $70.112 | Tuition, Student Fees, Books and Supplies, Room, Board, Transportation, Personal Expenses, Direct Loan Fees |
米国ロースクールへの日本人留学生の多くは、大手法律事務所や大手企業、裁判所、検察庁や中央省庁からの派遣で、派遣元から経済的な支援を受けているのが実情です。一部の法律事務所の海外留学派遣では退職金代わりの片道切符ということもあるようですが、海外留学後、その派遣元で相当期間働くことを事実上(法的にはともかく)コミットすることになります。
事務所、企業や官公庁などからの派遣で留学する場合はいいのですが、自己負担で留学するとなると、上述の授業、生活費、往復旅費等のほか、留学中の収入がなくなるので相当な資金的手当ての準備が必要です。その額は前述のように日本の法科大学院と比べ物になりなせん。
しかし、資本原理の貫徹している米国社会では、投資に見合う見返りが、将来あるということでこうした高額な授業料の設定になっていることも事実です。従って、これだけの金額を自己投資するわけですから将来のキャリアプランニングをしっかり立てて留学する必要があります。
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